オープン・ユア・アイズ

スペイン 1997
監督 アレハンドロ・アメナーバル
脚本 アレハンドロ・アメナーバル、マテオ・ヒル

自動車事故で二目と見られぬ醜い様相となった男の、夢とも現実ともつかぬ奇妙な日々を描いたSFサスペンス。

トム・クルーズ主演で公開された「バニラ・スカイ」のオリジナルとしても有名。

私はバニラ・スカイ見てないんですが、なんで見ないのかというとその理由は簡単で「どう考えてもこれを超える作品になるわけがない」から。

初見時、スペインの映画なんてほとんど見たことがなかった私は、なんてスペインって国の映画は凄いんだ、と軽く勘違い気味のカルチャーショックをうけてしまったほど。

まあそれは数年の後、アメナーバル個人が凄かったのだ、というオチに至るわけですが。

やはりですね、監督が圧倒的にうまかったのは、幻覚とも妄想ともつかぬ錯綜する現実を、飛ばしすぎず、セーブしすぎず、じりじりと真相へと導く「引きの鮮やかさ」であった、と私は思うんです。

強引に無茶しないんですね。

きちんと計算づくで観客を煙に巻こうとしている、というか。

これはいったいどういうことなんだろう?とあえて集中しなくとも自然に考え込んでしまう作りになってる。

まんまと掌で遊ばれてしまう語り口の匙加減が絶妙なんですね。

タイトルそのものが伏線であり、重要な意味を持つ、という仕掛けにも舌を巻きました。

こうしめくくるのか!と見終わって私は鳥肌が立ったほど。

オチそのものは勘のいい人なら類推できる、と思うんです。

ヒントはちゃんと散りばめられてますし。

ただ、この作品が凄かったのは、オチが予想できていてすら、そのエンディングをまんじりとも出来ぬ緊張感で演出してみせたことにある、といえると思います。

ああ、そういうことだったのか、と全ては明らかになるんですね。

でも最後の最後まで、本当に大丈夫なのか?いいのか?そんな行動とっちゃって?と、見る側を不安にさせる非現実感がぶすぶすと燻ぶってて。

見事!という他ありません。

個人的には90年代最大の収穫であり、10年に1本のSF映画の傑作だと思う次第。

必見でしょう。

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