2019年初出 KENT
リイド社ボーダーコミックス 1~2巻(以下続刊)
色を失った世界で繰り広げられる、カルト教団と色力を研究する研究者の戦いを描いたディストピアSF。
マーシパルスと呼ばれる極大な太陽フレアが世界から色(色素)を奪ってしまった、という設定でのお話なんですけど、うーん、これどうなんだろ、と。
電子機器や通信衛星が破壊され、文明社会が機能しなくなる、というのはわかるんです。
もちろん人体にも影響が出るかもしれない。
発がん率が高まり、死亡者が激増するとかね。
でも、太陽フレアが放出する高エネルギー荷電粒子が色素に影響を及ぼしたり、人間を異形の怪物に変えたりはしないと思うんですよね。
詳しくはないんで自信はないんですが、ちょっと疑似科学的に飛躍がすぎるんじゃないか?と。
ましてや失われた色素が色力を帯びてエネルギー化するとか、ありえないと思うんですよ。
そのような秘めたるパワーを色素が持ってたら、塗装屋は怖くておちおち仕事もしてらんないって話だ。
結局のところ、余計な解説を持ち込んでしまったがゆえに物語が陳腐にファンタジー化しちゃってるんですよね。
太陽フレアとか、いらないですから。
いつの時代のどこともしれぬ「色のない世界での物語」でよかった。
その方が想像力も刺激するし、ミステリアスだったと思います。
世界がそうなった原因とか、エンディングでほのめかす程度でいい。
あと、主人公の研究者があまりにも不敵なのが私はちょっと引っかかってて。
無力な女の子を抱えて個人対集団の戦いに身を投じていく悲壮さ、逡巡がまったくないんですよね。
過去に謎がありそうなんで、それが影響してるのかもしれませんが、それにしても・・・って感じなんですよ。
敵教団があまりに無策でただ力押しなのも興ざめ。
なんだこりゃ?SFの意匠をまとった香港カンフー映画かよ?と。
それらしい素材やお膳立ては用意されてますが、悪い意味で少年漫画的だな、というのが私の結論。
ノー・ガンズ・ライフ(2014~)とかお好きな方はストライクかもしれませんが、私はちょっと・・。
人外よりも女の子の作画の方が達者なように思えるんで、人間メインの漫画のほうが映えるのでは、と思ったり。
白黒印刷の単行本にカラーで差し色を入れるのはアイディアだな、と感じましたが。