中国/香港 2019
監督 ウィルソン・イップ
脚本 エドモンド・ウォン、デイナ・フカザワ、チェン・タイリ、ジル・レオン
あーついに終わってしまうのか~、と見る前からお名残惜しい、イップ・マンシーリーズ第4弾、完結編なわけでございます。
大当たりしたドル箱シリーズだと思うんですけどね、思ってたより潔いというか、順当に最後を迎えたというか。
香港映画の場合、なにかひとつ当たったらスピンオフやら姉妹作品やらで骨の髄までむしゃぶりつくすイメージがあるんですが、最近はそうでもないんですかね?
ここ数年はむしろハリウッドのほうが貪欲か。
SAWシリーズとか、いい加減にしろ、と思ったもんなあ。
でもまあ、イップマンに関しては10作ぐらい続けてくれても良かったんですけどね。
主演のドニー・イェンが老いていくのと同時進行でイップマンの生涯を追う、ぐらいの壮大なプランニングを実行して欲しかったぐらい。
それぐらいイップマンはドニー・イェンにとってはまり役だったと思うし、ライフワークと位置づけても良い企画だったと私は思いますね。
なんといっても秀逸だったのは、イップマンという実在の人物の伝記映画として物語を成立させるだけでなく、脚色も込みでその高潔な人柄、妥協なき精神性を通じて動乱の時代を生き抜くすべを描き、なおかつエンターティメントとしても高い娯楽性を誇っていた点でしょうね。
最終的に敵対してしまったことは残念だし、その決着は武道家として白黒つけるが、それ以前に我々はお互いをもっと尊重しあい、民族を超えて融和をはからねばならない、と訴えかえるカンフー映画なんて他に存在しないですよ。
それを差別にさらされる側である中国人が発するんだから、心揺さぶられないはずもなく。
私がもうちょっと若かったら明日にでもイップマンに弟子入りしたいぐらいだ。
で、最終作である本作なんですが、結論から言っちゃうなら、辛辣ではありますがイップマン葉問(2010)の焼き直しですね。
問題提議されているのは、葉問と同じく「黄色人種」に対する「白色人種」の根強い差別意識。
サンフランシスコで迫害を受けるチャイナタウンの同志のために、イップマンが立ち上がるわけですな。
チャイナタウンの中国人はイップマンをよそ者扱いしているのにも関わらず・・・ですよ、あなた。
まあ、これも葉問と同じ物語構造なんですけどね。
サモ・ハン・キンポーの代わりをユー・ウエが演じてるようなもの、といえばわかりやすいか。
肝心のアクションシーンは可もなく不可もなく、といったところ。
サモハンがアクション監督を努めた葉問に比べて、動線の創意工夫やデティールに対するこだわりは控えめ。
ユエン・ウーピンの仕事ですんで、こんなものかな、って感じです。
基本同じことを舞台を変えてやってるだけなんでね、そりゃどうしたって葉門ほどは盛り上がりません。
イップマンも似たようなセリフを、再び吐くわけにもいかないでしょうし。
完結のための完結作、といった風合いは否定できない、といったところ。
・・・でもね、いいんだ。
もう、会えないですしね、イップマンとは。
何をどう転んだところで絶対に続編は作れない終わり方ですし。
作品の出来云々は別にして、気持ちよくイップマンと最後の語らいを楽しもうじゃないか、というのが本音。
熱烈なシリーズのファンなものだから勘弁してくれ。
すべて受け入れるよ、ありがとうイップマン。
ここ10年ほどで一番楽しめたカンフー映画でした。
あえて言おう、香港映画最高峰である、と。
余談ですが、ブルース・リー、生きてたぞ。
チャン・クォックワンは本当によく研究してた、偉いっ。