アメリカ 2017
監督 ビル・ワターソン
原案 スティーブン・シアーズ
自宅の一室に作り上げたダンボールの迷宮から出られなくなった主人公と、その仲間たちを描いたナンセンスコメディ。
ま、普通に考えて、出られなくなるわきゃなかろうが!ばかばかしい!って話なんですが、そこをつっこみだすと物語が成立しなくなるんでとりあえずスルーするとして。
いったいどんな力がどのように作用したのかさっぱりわからんまま迷宮は、とても集合住宅の一室に展開されたとは思えぬ広さとトラップの数々でもって登場人物たちを翻弄します。
全員の目的はもちろん迷宮からの脱出。
たかがダンボールの迷宮となめてかかると命を落とす危険もあって、これがなかなかに侮れなかったりする。
なぜかミノタウロスなどとというギリシャ神話の怪物も登場。
で、この映画が一部で話題になったのは、迷宮そのものや小道具をすべて実際にダンボールで手作りしていることにありまして。
CG全盛の昨今に、とことん逆行するかのような遊び心が映画ファンに注目されたわけですが、逆を言うなら、そこを楽しめないと何が面白いのかさっぱりわからない、って人も少なからず居そうな気もしますね。
ま、発想はおもしろい、と思うんですけどね、やっぱりシナリオがね、いまいち弱い。
ただ閉じ込められました、脱出に四苦八苦してます、ってだけなんですよ。
なぜ閉じ込められたのか?に言及することもなければ、迷宮の仕掛けがなにかを暗喩してるってこともなく、脱出することが落語で言うところのサゲになってるわけでもない。
単に不条理なだけなんです。
せめて笑えるなり、毒があるなりしたらまた違った、とは思うんですが、それも薄いときた。
このネタならもっと悪ノリできたと思うんですけどねー、どうにも優等生なんですよね。
どことなくダンボールの迷宮を作り上げたことだけで、スタッフ一同が満足しちゃってるような節がある。
こういうナンセンスさって、嫌いじゃないんですけどね、どうせならホラーコメディにするぐらいの勢いでもっとデタラメやらかして欲しかったですね。
血のりを紙テープで表現するセンスとかは好きなんですが、まだまだ改変の余地は大量にある、といったところでしょうか。
努力賞、ってな感じですね。
お暇な方向けの一作。