アメリカ 2004
監督、脚本 ブラッド・バード

ディズニー配給ピクサー制作のフルCGアニメ第6弾。
つっても私の場合、あまり熱心にピクサーのアニメを追っているわけではないので、第6弾と言われても一向にピンと来なかったりはするわけですが、継続してリリースされてるってことは人気があるということでしょうし、そこは期待してもいいのかな、と。
普段ならほとんど見ることのないフルCGアニメなんですが、この作品に限ってはちょいと食指をくすぐられまして。
というのも監督がアイアン・ジャイアント(1999)を世に送り出したブラッド・バードだったから。
私が海外のアニメで心揺さぶられたのはアイアン・ジャイアントが最初でして。
やっぱりね、アニメ大国日本であまたの名作アニメに触れてきた身としては、ウォルト・ディズニーから一歩も前進しないアメリカのアニメなんぞにさして感銘を受けるはずもなく。
ま、舐めきってたわけですね。
実際、2000年ごろまでは、インディーズはともかくとして大人の鑑賞にも耐えうるアニメなんてアメリカにはほとんど存在しなかったように思います。
それをひっくり返したのがアイアン・ジャイアントだったんじゃないか、と。
こんなことをできる奴がアメリカにもいたのか!と驚きでしたね。
海外アニメで泣かされそうになるなんて、私の場合、ありえなかったわけで。
そりゃ新作への期待も膨らむ、ってなもの。
ま、大手ピクサーですんで作家性はあんまり期待しちゃいけないとは思うんですが、なにかしらやってくれるんじゃないかと思ってしまいますよね、やはり。
で、結論から先に言っちゃうと、感嘆と落胆が半々ってところでして。
これね、あくまで今振り返るなら、という話なんですが、まだMCUすら動き出してなかった時代に、スーパーヒーローをファミリーものに焼き直して再生する、ってなかなかに革新的だったのではないか、と思うんですよね。
しかも政府によってヒーローの活動が制限されている時代、という設定。
アベンジャーズの換骨奪胎ともいえるリモデルだったんじゃないか、と。
今やマーベルが予想を上回る快進撃で業界を席巻してますんで、ついつい見逃されがちですが「もう一度ゼロからコミックのヒーローを実写化する」なんて企画が「ない」頃に、じゃあどうやってヒーローを再び立脚させるのか?を考えた場合、アニメだからこそできることを最大限活かしたように私は感じるんです。
これが唸らされた点。
いまいちだなあ、と思ったのは、特殊な能力を持つ家族の剣呑さが、後半の大活躍でなんとなくうやむやになってしまったことなんですが、こりゃこの手のファミリー向け映画の場合、仕方のないことなのかもしれません。
じっくり掘り下げすぎてアイアン・ジャイアントのように興行成績惨敗じゃあ、ピクサーが黙ってないでしょうしね。
そこはブラッド・バードも学んだのかもしれない。
それを補ってあまりある痛快なアクションシーンが山盛りだった、というのも実際ですし。
もうねー、つい最近も書いたような気がするんですが、ヒットの方程式に忠実であることと、独自性ってのはやっぱり両立しないものなのかな、とほんと思いますね。
面白かったのは確かです。
けれど無い物ねだりをあえてつぶやくなら、アイアン・ジャイアントはもうここには居ない。
こういうことをぶつぶつ言うマニアをまず排斥することからディズニー/ピクサーの隆盛は成り立ってるのかもしれないな、とふと思いましたね。