2008年初出 石黒正数
講談社KCDX
それぞれ別個の話が別々に進行しているように見せかけておいて、ラストにすべてが交差、収束するミステリ風の近未来SF。
なるほどこうくるか、とちょっと唸らされた、というのはありましたね。
欲をいえばアリオとはいったいなんだったのか?という部分で、さらに突っ込んだ考察を想像力を駆使して披露して欲しかったんですが、そこは曖昧なまま。
まあでもこれはこれで良いのかもしれません。
異形の悲劇を演出するエンディングは間違いなく胸に迫ります。
ちょっと気になったのは相変わらず笑いの質が古いなあ、と思えた点。
確信犯なんでしょうけど、どうしてもドタバタがやりたいならもう少し演出なり、緩急なりテクニックを磨いて欲しい、と思う次第。
このストーリーならあえてコメディタッチな要素を加える必要はなかった、とも思うんですが、そこはやはり従来のファンのニーズがあるんでしょうかね。
わかりませんが。
後は絵柄ですかね。
うまいのか、へたなのか、良くわからん描画がたまに目につくんです。
我慢ならん、というわけではないんですが、ヘタウマの境界線上をギリギリのバランスでつたい歩きしてるような気もしなくはありません。
プロットの秀逸さ、見事な伏線の回収の仕方は評価されてしかるべき、と思うんですけどね。
あとは個人の好みの問題でしょうか。
素晴らしい、と思う反面、のめり込めない、と感じる自分が居たりもします。
SFであることのみに注目するなら、もっとこういう作品がたくさん発表されて欲しい、とは思うんですけどね。