2024 アメリカ/カナダ
監督、脚本 スコット・ベック、ブライアン・ウッズ

2024年発表のA24作品の中じゃあトップクラスの出来
末日聖徒イエス・キリスト教会(モルモン教)のシスターが、布教のために訪れた家でとんでもない目にあうサイコスリラー。
まずはモルモン教のシスター二人組が主人公、って時点ですごく攻めてるな、と思いましたね。
だってあとから絶対もめるに決まってるから。
シスターを正しくリアルに描写しようが、ゆがめてディフォルメしようが教団から抗議されるのは間違いないですから。
黙って鷹揚に構えてるはずがない。
実際、非難する声明を出したらしいですしね、モルモン教。
制作側がそれを予想できないはずもなく。
それがわかっててもあえてやる、その姿勢というか覚悟を私はまず評価したいな、って。
A24ならでは、と言えるのかもしれませんが、藪をつついて蛇をおびき寄せるようなことをしてまで撮りたかったことって、なんだろう?と俄然気になってくるじゃないですか。
ましてや監督コンビは前作シックスティ・ファイブ(2023)で『アダム・ドライバーの壮大な無駄遣い』とまでいわれたスコット&ブライアン。
色んな意味で腹くくったのかな、って。
ま、ぶっちゃけね、女の子二人組が閉じ込められて逃げられなくなるホラー、って定番というか類似作がありすぎて、どこに目線合わせりゃいいのかわからんぐらいありきたりだったりはするんですが、それをシスター二人組という設定の目新しさで『違った色味』にしてきたことは確か。
この作品に対する予備知識が私になかったせいもあるんですが、序盤なんて「これはいったいどういうスリラーなんだ?」と小首をかしげたほど。
だってね、延々宗教談義やってるんですよ。
私にキリスト教の知識があまりないせいもあって、半分ぐらいは何を言ってるのかよくわかんなかったりはするんですが、それでも家の主であるミスター・リード(ヒュー・グラント)が巧妙にシスターたちの信仰を揺さぶろうとしているのは伝わってくる。
あ、こいつ自分の主張に都合が良いようにブラフかましてるな、ってだんだんわかってくるのもあって。
それがミスター・リードの最終的な目的に対する興味として視聴者をくぎ付けにする。
このオッサンは結局、二人のシスターをどうしたいんだ?と。
やってることはサイコスリラーで脱出劇なんですが、弁法が従来のサイコパス映画とは一味違うんですよね。
性的倒錯だとか、反社会性パーソナリティ障害だとか、愛着障害だとか、その手のよくあるパターンに収まらない感じで。
何考えてんだかマジでよくわからんのですよ、ミスター・リード。
またヒュー・グラントが変にうまくて。
どうみてもいい人そうなのに頭のネジが飛んでるという怪人物を飄々と熱演。
ヒュー・グラントという役者がこれまで積み上げてきたイメージのせいもあるんでしょうけど、こんな人物がサイコパスなはずがない、とどこか信じてしまいそうになる親しみやすさがあったりするんですね。
その分、ギャップが強烈で。
ここ数年の間に見たこの手のホラーの中じゃあ、設定とキャラの独自性が目くらましになって、最も先の展開が予想できなかった一作だったことは間違いない。
で、肝心のオチなんですけど、私が感心したのは、リードの考える宗教に対する考察を帰結へと導いた点と、ラストシーンに昆虫を用いた演出を施したこと。
前者に関しては投げっぱなしでもよかったと思うんですね。
そりゃまとめた方が良いけれど、まとめなくとも作品は成立する。
仕事が丁寧だな、って。
そういうのって、普通に好ましいですよね。
後者に関しては詳しく書けないんだけど、前半のあのセリフをこういう形で回収するのか、と唸らされまして。
妙にファンタジックだったりするんですよ、これが。
いや、想像以上の力作でしたね。
終盤、若干ね「いやいやそりゃ無理だろ、お前は不死身か!」とつこっみたくなるところもあったんですが、トータルで挑戦的かつ野心的な作品だったと思いますね。
実在の宗教をネタにしてまで描きたかったこともうっすらとわかる。
最後に付け加えておくなら、この映画、どの宗教をも肯定および否定していません。
キワキワのラインで、誹謗中傷や論拠のない言説は用いてない
もしこの映画に何かを傷つけてる、と思うならそう思うあなたが一番重症だってこと。
こういう映画がふいに発表されるからA24はほんと侮れない。
ねじレート 90/100

