アメリカ 2024
監督 デビッド・リーチ
脚本 ドリュー・ピアース

要点をきっちりおさえたエンタメ娯楽大作
1980年代に放映されたテレビドラマ「俺たち賞金稼ぎ!!フォール・ガイ」をリメイクした作品。
伝説のスタントマンがお得意のスタントテクニックを駆使しながら、映画制作現場の黒い陰謀を暴いていく、という内容。
昔、ハリウッドの特殊効果マンがその技術を駆使して政府筋の事件に挑むF/X 引き裂かれたトリック(1986)という作品があって、似たような感じなのかなあ、でも今は殆どがCGだから映画業界の裏方を(スタントマンとはいえ)キャラ立てするのも難しいんじゃないのかなあ、なんて思ったりしたんですが、想像してたよりも時代とズレてなくて感心。
やるじゃないか、デビッド・リーチと。
デビッド・リーチって、監督というよりは製作のイメージがあったんでね、この手の娯楽映画をサラッと仕上げる手腕があったこと自体に「へえ・・」って感じでしたね。
スタントマン出自である自身の経験が生きた、ってことなのかもしれないですけど。
だってアトミック・ブロンド(2017)があんな風で、ブレット・トレイン(2024)があのザマでしたからね、期待しろ!という方が無理(私の場合ね)。
ま、正直いうと、主人公スタントマンが特技を使って急場をしのげるよう、やや強引にアクションシーンを誘導したきらいはありますが、派手な立ち回りが良いアクセントになってたんで、これは許容の範囲内かな、と。
あとはロマコメ風に、昔お付き合いしかけた彼女と再会して焼け木杭に火が付く展開を主筋にしたのがうまかった、と思いますね。
事件も陰謀も、主人公が彼女との仲を深める上での障害になってるんですよね。
ロミオとジュリエットじゃないけど古今東西の昔から、障害を乗り越えて成就する恋の物語って、鉄板なわけですよ。
そりゃ上手に引きを演出してやりさえすれば、盛り上がること必須。
ただ、少し残念だったのは、監督がヒロインであるエミリー・ブラントをあんまりキレイに撮ってあげてないこと。
役柄が女性監督だったんでね、ある程度リアリティを重視したのかもしれないですけど、この手のロマコメでヒロインが普通におばちゃんって、完全にアウトだと思うんですよ。
いや、エミリー・ブラントが実年齢42歳だから年齢相応と言われればそれまでですよ、でもね「こんなにキレイな人だったら主人公が命がけになるのもわかる」って観客を納得させないことにはね、結果的に、ライアン・ゴズリングが熟女好きの変わり者にしか見えなくなっちゃうわけですよ、いいのかそれ?って。
・・・はいはい当事者同士でお好きにやってください、って共感性ゼロの映画じゃまずいだろ、と。
ただただ狂騒的な女性プロデューサー、ゲイルや、アクションができないスター俳優、トムのキャラとかよくできてたんでね、なんかもったいないな、と思いましたね。
しかしトム・ライダーって登場人物、てっきりトム・クルーズのことだと思ってたんだけど、劇中でやんわり否定されてましたね。
トム・クルーズをわかりやすく皮肉ってる方が毒があって面白かったと思うんですけど、どこかから横槍がはいって予防線はったか?
ともあれ、不出来な部分を勘定に入れたとしてもね、アクションあり、サスペンスなどんでん返しもありのロマンスで、バランスの良い娯楽大作に仕上がってたように思いますね。
最近はこんな風にスカッと気分転換できる映画も少ないですから、重箱の隅をつつくような真似は不粋、と言えるかもしれません。
この映画が嫌い、って人はほとんどいないんじゃないでしょうかね。
特になにか強い印象を残すわけじゃないけど良作だと思います。
ねじレート 80/100