シビル・ウォー アメリカ最後の日

2024 アメリカ
監督、脚本 アレックス・ガーランド

アメリカで19の州が独立を宣言し、テキサスとカリフォルニアを中心とした西部勢力と政府軍の内戦が勃発した世界線を描く戦争映画。

主人公は戦場カメラマンのグループなんですが、トピックを求めて、大統領への単独インタビューを画策してまして。

まともに申し込んでも拒絶されるんで、それなら直接押しかけてやろうじゃないか、と乗用車一台に4人乗り込んでワシントンDCへと向かうんです。

ただ、道中は戦場なんで、命がけの道行きとなる。

さて主人公たちは、戦火をくぐり抜けて無事首都へと辿り着けるのか?が大まかな物語の見どころ。

なんせA24史上最高のオープニング記録を樹立した一作ですし、監督もMEN 同じ顔の男たち(2022)で私を仰天させたアレックス・ガーランドですから、相当な期待をしてたんですけど、見終わっての正直な感想は、あれ?こんなもの?でした。

いや、ひりつくようにリアルな作劇だったことは確かです。

ひとつ間違えたら簡単にあの世行きな恐ろしさが、日常にぽっかりと口を開けているんだな、と伝わってくる細かな演出は巧みだったと思います。

戦下の日常の緊張と緩和を上手にドラマ作りへと活かしてる。

特に終盤の死体を巨大な穴に処分する兵士たちとの会話は、内戦というややこしさの、対立するイデオロギーや理不尽さを象徴しているかのようで、見ごたえがありましたね。

相手側の理屈がわからん状態で銃口にさらされる怖さが半端なくて。

また映像が、美しくてねえ。

血煙と小さな草花の対比が際立つ構図とか、さすがはアレックス・ガーランドと見惚れる絵面がそこかしこで堪能できて。

これはガーランド作品では常連の撮影監督であるロブ・ハーディが優れてる、というべきなのかもしれないですが。

ただね、このロードムービー調の作品が、なにを落とし所としたのか?を振り返ってみた時、意外にも戦場カメラマンという職業の非情さを印象付けたに過ぎなかったような気が私はして。

なんせトランプ政権下のアメリカで内戦映画ですから、強烈なアイロニーや当てこすり、なんなら本人としか思えない人物が配役されてるのではないか、と勘ぐったんですが、ほぼ今のアメリカを感じさせる部分はなくて。

ま、マイケル・ムーアじゃねえんだから露骨に政治的主張を作品に織り込まなくてもいいとは思いますが、戦争の愚直さ、非合理さを報道という第三者の視線で浮き彫りにしてみました・・だけではね、さすがにパンチが弱い。

そんなの、個別に過去作のタイトルを挙げるまでもなく、みんなやってますからね。

じゃあ、スクープに囚われたカメラマンの愚かさに注目すべきなのか?というと、それも今更な感じがしなくもない。

ナイトクローラー(2014)とか、まだ記憶に新しいですしね。

エンディングもなんだか変な戯画みたいだったしなあ。

そもそもアメリカで内戦、というプロットに私はピンときてないのかもしれません。

なぜ内戦に至ったのか?を一切説明してくれないですしね。

私の感覚じゃ、ある日、関西連合が独立を宣言して首都東京に進軍しだしたって言われるのと同じレベルで「いや、それはないわ」って設定だったりするんで。

なぜこの作品がアメリカ本国でヒットしたのか、正直よくわからないですね。

アメリカ人ならわかる何か、があったりするんだろうか?うーん、想像できない。

世間の高い評価とは裏腹に、個人的にはガーランドの脚本とは思えぬ凡庸さを感じた一作。

ちょっと期待しすぎたのかもしれません。

あ、久しぶりに見たキルステン・ダンストは素晴らしい演技を披露していたと思います。

こういう役をやらせるとやっぱり上手いな、と感心しました。

ねじレート 70/100

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