2017年初出 多田乃伸明
講談社ヤンマガKC 全3巻

エスニシティゼロワン(2011~)以降、音沙汰ないな・・と思ってた多田乃伸明がいつのまにか月刊ヤンマガで復活してて軽く驚きました。
おおっ、成り上がってる!みたいな。
SFにこだわってきた漫画家がメジャー誌で活躍するのは喜ばしい限りなんですが、今回の題材は意外にも時代劇。
厳密に言うなら時代劇風の舞台設定を用いたファンタジーなんでしょうけど、これがね、ありがちな「なんでもありの頭の悪いチャンバラ漫画」になってなくて、悪くない。
マタギを志すも性別故に叶わぬ少女、を主人公にしてる点も独特でいい。
神々と人間の関わりをテーマにしている点がジブリ風だとか言われたりはするんでしょうけど、神々そのものがギリシャ神話風の性格を帯びているのがあらぬ方向に段飛ばし気味で異彩を放ってる、と私は思いましたね。
誰が山神にエルスなどというカタカナ名を冠するか、って話ですよ。
物語終盤の探索地である天領と呼ばれる都に電気が通ってる、って設定にも感嘆。
いやいやスチームパンクかよ、と。
こういうアイディア、発想ってSFに通暁してなきゃ絶対に出てこない、と思うんですね。
確実に作者は進化してるし、過去の連載を糧に大きく成長した、と確信。
惜しいな、と思ったのは、主人公のアモがいつの間にか「又鬼」になってて、さしたる労苦や戸惑いもなく小狡い大人と堂々と渡り合う存在になってしまってたこと。
やはり田舎の小娘がね、都にでていくというのであれば世間知のなさが致命的に足を引っ張るはずで。
そのままでは通用しない、と導く大人が必要だと思うんです。
成長物語としての側面は、主人公を血の通ったキャラクターとして立脚させるためにも不可欠だったのでは?と。
そこが完全に欠落してるんですよね。
なのでアモがどういう少女で何をどう感じているのかが、うまく物語から伝わってこない。
すごい過去を背負ってるんですけど、ただ機械的に山神を探してるだけにしか見えない。
先生と呼ばれるキャラが途中で登場するんですけど、何故か意味なく早々と退場してしまいますしね。
長期連載に至らなかった原因はそこかな、という気もします。
ちなみに物語終盤の展開はもうほとんど永井豪のレベルでハルマゲドンの様相。
しかしまあ、山神とか祟りとかその手の民間伝承っぽいネタを出発点に、よくぞこんな絵面、場面に辿り着いたものだな、と。
混沌としてる、と言われれば否定はできないと思いますけどね、物語に取り込まれた自由な発想、小さな工夫が私にとっては心地よい違和感(ミスマッチのマッチングみたいな)をもたらすものでしたね。
打ち切りっぽい終わり方ですけど、駆け足ながらも作者の魅力は発揮できてる、と思います。
どこか、 多田乃伸明にじっくり描かせてやれる媒体はないものか。
間違いなく今が全盛期だと思うんですけどね、あまり知られてないのがもったいない。