アメリカ 2001
監督、脚本 ヴィクター・サルヴァ
コッポラ云々は、とりあえず脇に置いておいて見たほうが賢明かと。
彼が作品に積極的な貢献をしてるとは思えないし、とうの昔に全盛期過ぎてますし、辛辣なことを言うなら名義貸しビジネスみたいなものでは、と私は考えてたりします。
だいたい製作総指揮に、コッポラも含めて5人も名を連ねてますしね。
推してや知るべし。
ぶっちゃけよくあるタイプのアメリカン・ホラーだと思います。
23年に一度、23日間に渡って行方不明者の出る伝説が残る街に、偶然やって来た姉弟の恐怖を描いた作品なんですけど、ちょっと待て、これキングのIT(2017)じゃねえかよ!と私なんかは思った。
最近、アンディ・ムスキエティ監督版の二作を見たから余計にそう思うのかも知れませんけど、プロットの相似性は誰もが認めるところじゃないでしょうか。
ITが少年少女たちのままならなさ、勇気を謳う冒険譚として独特のポジションを築いていたのに対し、こちらは余計なことに首を突っ込んでひどい目にあってしまう若者を主役に据えるという王道パターンを踏襲しているのが特徴でしょうかね。
ま、特徴というよりはひねりなし、といった方がいいのかもしれませんけど。
それでも前半はさほど悪くはなかったんです。
謎が謎を呼ぶサスペンスタッチな進行は、アホな弟の、好奇心が猫を殺す行動に支えられて、なかなか見ごたえがあった。
霊能者モドキを劇中に放り込んで、真相を撹拌する手管も悪くない。
私がなんとなく冷めてしまったのは、クリーパー(ITで言うところのペニーワイズ)が登場する後半ですかね。
なんだろ、人なのか、それとも怪物なのか、判別しかねる造形(デザイン)なんですよね。
江戸川乱歩の少年探偵ものにこんな怪人、出てこなかったか?みたいな。
その身体能力や行動はとんでもなく人間離れしてて、人でないことは確かなんですけど、絵面から伝わってくるのは、金かかった仮装してる人?みたいな感じなんですよね。
こればっかりは個人の感覚ですんで。
クリーパーはこの見た目がいいんだよ!とおっしゃる方もきっとおられるに違いない。
ただ私は、モブキャラっぽい凡俗性をクリーパーの外見に嗅ぎ取ってしまったんですよね。
そりゃ、のれないです。
なんか普通に世間話とかしだすんじゃないか?みたいな気もしてきて、恐怖も半減。
というか、こんなのが23年に一回ウロウロしてるなら、街の連中もいい加減気づけよ!って話で。
非現実的で謎めいた存在でなくてはならないはずが、ド派手に姿を表した挙げ句、街ぐるみで大騒動ですからね。
クリーパー、なんの考えもなしにバンバン人、殺しちゃってますから。
こんなの、伝説になるまでその存在を隠し通せるはずがない。
警察だって馬鹿じゃないわけですし。
予想外にバッド・エンドなラストはホラーとして悪くないと思うんですけどね、結局のところ伝奇ホラーにしたいのか、スラッシャームービーにしたいのか、どっちつかずなまま終わってしまったことが難点かと。
もう少し物語の舞台を狭めてやればまた違ったか、と思うんですが、これでは二番煎じと揶揄されても反論できないでしょうね。
3まで作られてますんで、熱心なファンは存在してるんでしょうけど、私はもういいかな。
いっそのこと怪獣映画にでもするつもりで、クリーパーをさらに荒唐無稽な怪物にすれば違う意味で面白くなったかも知れません。