アメリカ 1988
監督 ロマン・ポランスキー
脚本 ロマン・ポランスキー、ジェラール・ブラッシュ
学会のためパリを訪れたアメリカ人医師が、空港でトランクを間違えた事から妻を誘拐されてしまう、という巻き込まれ型のサスペンス。
言葉の通じない異国で妻を奪還すべく孤軍奮闘するハリソンフォードの好演が光ってます。
大使館も警察も頼りにならない状態で、頼るべき人もなく、わずかな手がかりから犯人を追う主人公の焦燥、不安感みたいなものの表現はさすがポランスキー、の一言。
か細い糸が少しづつ事件を真相へと導いていく描写、デティールの積み重ねは非常に丁寧な仕事をしている、と思いました。
とりあえず謎の美女役のエマニュエルセイナーがエロいです。
いかに彼女をエロチックに撮るか、と言う部分に腐心しているかのようにも思えます。
ハリソンが翻弄されるのを見るにつけ、もう誘拐された女とかいいじゃん、口説いちまえ、それはそれでおもしろいストーリーになるかも、と私は思ったりしましたね。
というか、よく考えたら監督の嫁だった、セイナー。
好きでたまらん感情がフィルムに焼き付けられたということなのか、ポランスキー。
知らないけど。
幾分残念だったのは誘拐の黒幕である犯人が、なんだかちょっとマヌケな感じに演出されてしまっていること。
誘拐に手を染めるぐらいの悪党が医師ごときに気後れしてどうする、と言うのはありましたね。
そういう意味でラストシーンはもっと劇的にできたのでは、と思ったりもします。
きっちり120分の長丁場な作品なんで最近のスピーディーなサスペンスに慣れている人にとっては中だるみを感じるかもしれませんが、私はこの作品、監督らしくて好きですね。
じっくり描かれているからこそ味わえる非日常は、不思議なリアリティで迫ってくるように私には感じられました。