デンマーク 1999
監督、脚本 ニコラス・ウィンディング・レフン
主に、嫁の兄貴と色々こじれてしまった義弟の煩悶、凶行を描いた作品。
サスペンスといえばサスペンスかもしれませんし、心理ドラマといえば心理ドラマかも。
ストーリーは義弟と兄貴の確執を徐々にあぶり出していく筋立てと、彼ら2人を含めた気の置けない仲間4人組の内の1人、レンタルビデオ店店員の恋路を描く筋立てを、なぜか同時進行させる形で展開していきます。
まあ、群像劇的なことがやりたかったのかもしれません。
ちょっと社会からはみ出し気味な4人組の、大人なのに大人になりきれない屈折をまるごと切り取りたかったのかな、と。
似たような指向性を持つ作品はヨーロッパに腐るほどあるような気もしますが、どこか陰鬱で、なんか血生臭くなっちゃってるのがレフンらしさでしょうか。
後の作品で散見される派手な色使いや、実験的な演出は控えめですが、とかく盛り上がらないテンポの悪さはすでに顕著。
特に前半の朴訥さと来たら、物語の取っ掛かり、引きみたいなものをこうもないがしろにしたままでいいのか、と思えてくるレベル。
どう転ぼうとしているのかさっぱりわからないのは確かなんですが、どう転んだところで大したことにはなりそうにない気配が充満してる、とでもいいますか。
それがレフンの作家性だ、と言われればそうなのかもしれませんけどね、まあ、つくづく商業映画に向いてない人だ、この人は、と。
私が思うに、店員の恋路を追う一連の挿話は必要なかったですね。
時系列的になにか意味があるわけでなし、義弟のストーリーに絡むわけでなし。
なんらかの暗喩、皮肉として機能してるわけでもないし、さしたるオチもない。
やっぱりどうしても散漫に写っちゃうんです。
たとえそれが「恋することのままならなさ」を共通項として抱いていたにしても。
それなら義弟と兄貴の愛憎劇に重点を置いて、じっくりそれだけを見せてくれた方が気も散らないし、ドラマの重々しさも多分増した。
それで共感できるドラマ、なんらかの感慨を心に刻むドラマになりえたか?というのはまた別問題として。
というのもね、義弟の苦悩が生まれてくる子供に対する嫌悪感に端を発したものなんでね、これ、さすがに普遍性があるテーマとは言い難いわけで。
そもそもの題材がニッチといえばニッチ。
若い頃のポランスキーなら上手に撮りそうな気もしますけどね。
なんかどこかに届きそうで届かなかった作品、という印象ですね。
義弟の顛末はそれなりにショッキングですが、物語の構造的な問題も含め、もうちょっとうまくやれなかったか?と、どこかくすぶった感触の残る一作でしたね。