アメリカ 1997
監督、脚本 ダーレン・アロノフスキー

円周率(π)の謎を解くことにとりつかれた偏屈な数学者を描いたSFサスペンス。
目のつけどころはおもしろかった、と思います。
精神論や感覚的な抽象論に逃げず、それなりのうんちくを用意して編み上げられたシナリオは実に個性的で、凡百をおいてけぼりにしてることは確か。
主人公が当初の目的から逸脱して、モーゼ五書に隠された216桁の神の数字を暴こうとする展開も強烈なハッタリがきいていて、こりゃ本気でSFだ、と感心させられましたし。
世界はすべて数字で解明できる、と主人公は豪語するんですが、まあ、普通に考えてそんなわけないですよね。
でもそう信じてしまいそうになる周到なギミック、演出がこの作品にはありました。
そこはやっぱり監督の力量だと思うわけです。
やたら不穏で、ささくれだった神経をやすりでこすりあげるかのように病的な描写が多いんで、そこが好き嫌いを分けそうな気もしますが、私は際どいラインで観客を突き放していないように感じました。
むしろこういう作家性を顕著にした監督は、個人的には望むところ。
惜しかったのはやっぱりラストでしょうか。
あーまとめきれなかったか、ってな印象。
これでラストに驚愕のオチが待ってたりしたら諸手を挙げて大絶賛だったんですが、力及ばなかったよう。
まあでも長編デビュー作としては充分すぎるほどインパクトある内容だった、と思います。
妙に記憶に残る作品でしたね。