アメリカ 2000
監督 ウォルフガング・ペーターゼン
原作 セバスチャン・ユンガー
ジャンル映画?と思いきやノンフィクションが原作。
アメリカ東海岸近海でカジキ漁を生業とする漁師たちを襲った未曾有の大嵐の、その発生から収束までを克明に描いてます。
さて、原作がアメリカ本国でどのような評価を受けているのかは知らないんですが、映画の題材としちゃあ、ペーターゼン監督も随分思い切ったチョイスをしたものだな、と。
だってこれ、身も蓋もない言い方をするならね、密着巨大マグロ漁!伝説の漁師の素顔に迫る!みたいな、よくあるテレビ番組的企画と方向性は非常に似てるわけです。
もちろんテレビ番組では前代未聞の嵐と遭遇したりはしないわけですが、漁師の生き様に迫るというテーマ性は似通ったものがあるように思うんですね。
つまり、ある職業に従事する人たちの知られざる日常をとらえて、へえ、そうだったのか、と視聴者に感心してもらうこと、驚いてもらうことが第一義としてある。
まあ、テレビならそれでもいいでしょう。
でもこれが映画、となると、やっぱりどうしたって地味。
大海を相手に一攫千金を狙う荒くれ漁師のタフガイぶりは、そりゃ男ならどこか羨望のまなざしで見つめてしまう部分はあるんですが、そこにね、漁師であること以上のドラマが存在してないんです。
これはさすがに厳しい。
なにか作為的な感動路線を盛り込もう、と思えばきっとできたことでしょう。
でも監督はノンフィクションであることに配慮したのか、デティールにこだわりこそすれ、必要以上に演出過剰にならないようどこかセーブしてる節があるんですよね。
結果、緻密に人間関係を描いた割には特に何も爪痕を残さぬまま嵐だけが暴れ狂う、という有様に。
あれ?やっぱりジャンル映画?って。
ただ、スタジオ内にプールと漁船をわざわざ建造してまで撮られた荒れる海のシーンのみに関して言うなら、凄まじく大迫力で圧巻の一言。
なかなかCGじゃあここまでの悲壮感は出せなかったように思います。
マーク・ウォールバーグなんて、延々水ぶっかけられて甲板転げまわって、撮影の合間に辛すぎて泣いた、って言ってるぐらいですし。
評価できるのはそこぐらいですかね。
やはり、どこかドキュメンタリーでも見てるかのよう、と思える、ドラマツルギーの欠落が難点でしょうか。
後味の悪さも、そこまで原作に忠実である必要があったのか?と感じられるものでしたし。
余談ですが主演のジョージー・クルーニーは、伊達男すぎてどう見ても私には船長に見えませんでした。
まあ、映像だけ追ってる分には退屈しないんですけどね。