2003年初出 あさりよしとお
講談社アフタヌーンKC 全10巻
ろくでなしの父親を亡くし、天涯孤独の身となった主人公の中学生、六文の元に、なぜか悪魔がやってきて奇妙な同居生活が始まる、というストーリーのSFコメディ。
やってることは藤子F先生お得意のパターン「家庭に異物を放り込んでドタバタ」そのものなんですが、肝心の異物が地獄からの来訪者でしかも親代わりでもある、と言うのが独特なブラックさで目新しいように私は思いました。
地獄の軍団を手なずけているのがなぜか年端もゆかぬ少女るく、というのもおもしろい。
どうもるくは強大な力を持つ地獄の大物みたいなんですが、現世においてはカルチャーギャップに戸惑うかわいらしいお嬢さんでしかなく、その落差の演出の巧みさがこのシリーズの一番の魅力でしょうね。
るくのお茶目で暴力的な振る舞いを見てるだけで軽く10巻分楽しめてしまいます。
なぜるくが六文の世話を焼こうとするのか、その謎が明かされる終盤の展開は、世界の存在すらも疑いかねないアルマゲドンなシリアスさなんですが、ちょっと抽象的過ぎる、と思えるきらいもあり。
結局どういうことだったんだ、とはっきり説明できる読者はほとんど居ないのでは、と思ったりも。
やりたかったことはわからなくもないんですが、仰天のオチにこだわってハードルを高くしすぎたのでは、と私は感じました。
そういう意味ではすっきりしない部分もどこか残るんですが、そこに至るまでの各話の愉快さに捨てがたいものもあって、私にとっては手放せない1冊ではありますね。
大傑作というわけではないですが、作者のコメディが好きな人にとっては必携ではないでしょうか。