川下り双子のオヤジ

2007年初出 しりあがり寿
エンターブレインビームコミックス

元々「双子のオヤジ」という作者の作品がありまして。

山奥でオヤジ二人が、あーでもないこーでもないと益体もない会話を交わす対話劇らしいんですが、私は未読。

哲学的、との評も見かけますが、そうなのか?って感じで。

その「双子のオヤジ」が、筏に乗って、延々川下りをするのが本作なんですが、前作同様に対話劇の様相を呈しつつも、シュールかつナンセンスなロードムービー風、というのが新たな趣向になるのかな、と。

川辺に色んな人達(人に限りませんが)や村々が存在してて、双子のオヤジが通過するたびに一騒動、って按配なんですが、やってることは弥次喜多の圧縮スリム版、という気がしなくもありません。

世相を反映した風刺劇的な色合いも強いですね。

結構毒吐いてるなあ、と思いますし。

ま、つまらないわけじゃあないんですけど、かといって強烈な読後感を残す、ってわけでもないのが悩ましいところですかね。

小説宝石に連載されてた作品らしいんですが、活字の合間に読むにはちょうどよい箸休めになってたのかもしれないな、とは思います。

肩に力を入れずに読めるんで、400ページに及ぶ分厚さもあっという間なんですが、問題は作画でねー、なんだかもうすごいことになってまして。

もともと絵の上手い人ではないと思うんですけど、手抜きを疑わせる一筆書き同然な薄汚さはほとんど落書きと紙一重。

背景とかほぼ描き込まれてないですしね。

おそらくわざとやってるんでしょうけど、許されるレベルを超えているような気も。

特につまらない回なんかは絵を見てるだけで腹立ってきますからね。

あと、ハゲ散らかしたオヤジ二人の川下り、ってのがもう本当に華もなけりゃあ、映えもしなくて。

波平が二人して喧々諤々とどうでもいいこと議論してても、イラッとするだけだったり。

オッサンって、ほんとどこにも利用価値ないんだなあ、と逆にしみじみしちゃったり。

作者らしい着眼点や、突飛なプロットは「らしいなあ・・」と思うんですけど、これ、日曜日版だけに掲載されてる新聞漫画とか、日ペンの美子ちゃん(本編で何かを宣伝してるわけではないけど)に近いようにも感じますね。

読み捨てられて当たり前、その場限りのささやかな享楽みたいな。

単行本でまとめて読むほどのものじゃない、ってのが結論。

駄目だとは思いませんが、熱心なファン向きかと。

タイトルとURLをコピーしました