兄弟、尻が重い

1989~1992年初出 山上龍彦
講談社文庫

<収録短編>
ロケットマン
兄弟!尻が重い
秋刀魚日和
モ 300
隣人の華
突きの法善寺横町
夢の宴

稀代のギャグ漫画家、山上たつひこの短編小説集。

」のページでも書きましたが、技術的にはなんら小説家として如才なく達者です。

とても昨日まで漫画家だった人の書いたものとは思えません。

作品の傾向はおおむねコメディ路線、と言えるかと思うんですが、古くからのファンとしては、ああこれはいかにも山上さんが漫画でやりそうな題材、といちいち頷けるものばかりでしたね。

文章が作者の絵で漫画になって脳内で変換されるとでもいいましょうか。

出色なのはタイトル作である「兄弟!尻が重い」かと思うんですが、「突きの法善寺横町」もそのあまりのばかばかしさに腹を抱えました。

小説と言う形態なのにもかかわらず、往年の山上ギャグがリズミカルかつそのままの味で再現されているのに感心。

ただ、 この手のコメディって、筒井さんを筆頭に、たくさんの同業者が存在するわけで、その中で頭角を現しているか、というとそれは微妙なところ。

オチてない、と思える短編もいくつかあるんです。

あえておとさなかったのかもしれませんが、それを楽しめるのはやはり私のような熱心なファンだけだと思いますし。

おそらくこの段階では漫画でやってた題材をどう小説で表現するか、試運転中であり、あれこれ試行錯誤の状況だと思いますんで、化けるのはこのあとでしょうね。

個人的には充実の一冊、といっていい内容ではあります。

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