1974年初出 山上たつひこ
秋田書店少年チャンピオンコミックス 全26巻

現代ギャグ漫画の基礎骨格を作った分水嶺たる作品。
あらゆるギャグ漫画家が、我も我もと、がきデカを模倣しまくったように思います。
吉田戦車の登場ぐらいまでそれは続いたのでは。
すでにあちこちで言及されてますが、この漫画が画期的だったのは、それまでボケたおすだけだった旧来のギャグ路線に明確なツッコミを登場させたこと。
漫才の様式を漫画に反映させた、とでもいいましょうか。
さらに凄かったのは、そこから漫画ならではの「笑いのとり方」を独自に進化させていったことでしょうね。
数ある一発ギャグもそうなんですが、一瞬の早変わり、みたいなことをこまわり君はやるんです。
例えば、八丈島のきょん、なら崖っぷちでいきなり着ぐるみを着てたりする。
鶴居村の鶴、では突然ステージでドレスを着てヴォーカルをとっていたりする。
これ、現実では再現不可能ですよね。
CG全盛のハリウッドならともかく。
漫画でしかこれは表現できない。
連載終盤ではその早変わりがさらにエスカレートして、突然ストーリーと関係ない文芸路線なやり取りがワンシーンとして挿入されたりと、シュールな展開すら見せだす有様。
常連キャラすべてが「立っている」のも素晴らしい、と思う。
脇役として無個性なその他大勢が1人として存在しないんです。
小池劇画ですらここまで徹底してないと思う。
少年誌なりにセーブされた下ネタも、女性は多分眉をひそめるんでしょうが、私は絶妙な距離感だったと思いますね。
やりたい放題の下品な路線に見えて、それが実はセックスに直結せず、性的にはまだ未熟であるが故の暴走にとどめられていたからこそ子供が笑えたし、大人も腹をかかえたんだと私は思います。
間といい、シチュエーション作りのうまさといい、突拍子のなさといい、そのセンスといい、笑いとはなにかを知る天才の傑作でしょう。
何度繰り返し読んだかわかりません。