山上たつひこ傑作選

1985年初出 山上たつひこ
実業之日本社マンサンコミックス

1巻はかつて少年チャンピオンに連載されるも、何故か単行本化されなかった長編、冒険ピータン14話を収録。

2巻は主に青年誌に掲載された短編9話を収録。

購入するなら1巻でしょうね。

いわゆる海洋冒険ものなんですけど、なんせ山上たつひこなんで滅茶苦茶やらかしてます。

海賊船の女船長が乗組員と同性愛の関係にあったり、偶然助けた少年がまんじゅう屋の跡取りで海の上では全く役立たずだったり、うすらハゲた男の人魚がでてきたり。

そんな連中が海中に帝国を築く海の王子とドタバタを演じながら、凶悪なる支配者マダラ皇帝に立ち向かっていく、という筋書きなんですが、まあ、まともにお話が進むはずもなく。

ファンタジーとお笑いが渾然一体となって、わけのわからん世界観を創出してます。

路線としては鉄筋トミーに近い気もしますね。

なんせ脂がのりまくってる時期の作品なんで。

ギャグはキレまくってるし、発想はぶっとんでるし、主人公ピータンのキャラもアホさ全開で下劣で腹を抱えること間違いなし。

秋田書店から単行本化が見送られるほど不人気だったのが信じられないですね。

少年誌にしてはあまりに露骨すぎたのがアダになったのかもしれませんが、昔からのファンならこの程度は充分許容範囲内。

最終話が完全に投げてる感じなのが残念ですが、これは多分打ち切り宣告でもあったんでしょう。

非日常とシュールさ、笑いの尖り具合にかけては山上版海のトリトンとでも呼びたくなる秀作だと私は思いますね。

2巻はペップ出版から発売された3冊の単行本と収録作品が重複。

おそらくどの単行本にも収録されてない短編は表題作の「お薬ちょうだい」だけだと思います。

この1編のためだけに購入する、ってのもなかなか厳しいものがあるんじゃないか、と。

さして出来がいいわけでもないですし。

シリアスな路線の短編もいくつかあって、しかも初期のものが多いってのがさらに購入意欲を萎えさせるかと。

絵柄が全然違いますしね。

気になる人のために収録作品を最後に記しておきます。

<収録短編>
お薬ちょうだい
粉砕学園
男の斗魂
地球防衛軍
冗談紳士録
見えない廃墟
マイホーム・マイホーム
父帰る

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