1971年初出 石川球太
大田出版QJマンガ選書

60~70年代、動物漫画で人気を博した作者がSFに挑んだ異色作。
アイディア自体は単純きわまりないんです。
ある日突然、1人のサラリーマンが巨大化してしまったら・・。
たったこれだけ。
しかしたったこれだけのことが、いったいどのような出来事を、地域、街、最終的には日本に巻き起こすことになるか、という事を多角的、現実的にきちんと検証、ごまかしのない空想譚として成立させているのがこの作品の凄いところ。
人間が巨大化すると、いったい一日でどれぐらいの量の食べ物が必要で、どれぐらいの量の排泄物を垂れ流すのか、といったあたりを、しっかり数値化しているのにも感心しました。
つまりはファンタジーでも寓話でもない、ということ。
ばかばかしい設定ながら、シナリオにハッタリがないのでいつのまにかぐいぐいストーリーにひきこまれていく。
しかも本作、ウルトラマン等の巨大ヒーローものに対するアンチテーゼとして思いついた、と言うのだから全く恐れいります。
やはり強烈なインパクトを残すのはエンディング。
このあまりにシビアなラストシーンは一部の少年少女達にとって怒りの対象であり、またトラウマとなったことでしょう。
しかしながらこれこそがリアルだと思う。
本当に救いが無くてやりきれない気持ちになるんですが、それゆえ強く印象に残ります。
漫画史に埋もれさせてしまうには惜しい傑作でしょうね。
現在、amazonで結構凄い値段がついてますが、一時期何故かダイソー100円コミック全2巻で発売されてました。
今でもあるんですかね。
進撃の巨人の先鞭、といってもいいのでは、と思ったりもしたんですが、それはちょっと違うか、失礼。