1973年初出 手塚治虫

アニメ版のミクロイドSは、ミクロなヒーローを立脚せんとする勧善懲悪を強調した作品でしたが、原作に当たる本作は昆虫が一斉に人類を攻撃しだしたらどうなるか、という仮想を描いたパニックSFの傑作だったりします。
これを原作のまま実写映像化して欲しかった、とつくづく思いますね。
うまい人が撮れば国産特撮映画の歴史に楔を打ち込む記念碑的作品になっていただろうになあ、と。
ちょっと思い返してみても昆虫が大挙して人を襲う作品、ってソウル・バスのフェイズⅣぐらいしか思いつかないですし。
これがまた皮肉なことに同年公開だったりするんですけどね。
ああくそ、日本でも漫画の神様が近いアイディアを形にしてるのに、それを評価する環境が整ってなかったか、とちょっと悔しかったり。
子供向けにわかりやすいようにサービスされている部分はいくつかあるんですが、こういうパニックSFって漫画の世界じゃ当時、ほとんど描かれてなかったように思います。
先駆的だし、無差別に襲われるスリルに手に汗握る緊張感もあり。
ミクロイドというキャラ創造も、重いテーマの終末的世界観を描く中で、少年読者を突き放さないうまさがあると私は思いました。
あまり人気は出なかったみたいですが、隠れた名作だと思います。
大人の視線で読んでこそ色んな発見がある優れた1作。
おすすめですね。