アメリカ 1998
監督 ブライアン・デ・パルマ
原案 ブライアン・デ・パルマ、デヴィッド・コープ
割と酷評されてたりするんですが、私は結構この作品好きだったりします。
確かにですね、サスペンスとしての謎解きみたいな部分はたいしたことないですし、オチもあっけなかったりしますし、性急に物語を畳みすぎか、とも思いましたし、 エンドロールで大写しになる赤い宝石の謎もいまいちよくわかんないですし、大手を広げてベタ褒め、ってのはやっぱり難しいんですけど、でもね、デパルマのサスペンスって、元々こんな感じのチープさでひたすらヒッチコック・ラブだったじゃない、と私は思ったりもするわけです。
それを踏まえた上でなにが好きなのか、というとですね、やはりテンションの高さ、に他なりません。
張りつめた糸が全く弛まない。
実はこの物語、嵐によって隔絶されたアトランティックシティのドーム及び関連施設の中だけで展開する密室劇だったりするんですね。
閉鎖された空間の中で、ボクシングの試合の観戦に訪れた恐ろしい数の観客の中から、いかにして刑事は犯人への糸をたぐるのか、という多角的な視点の演出は充分期待に答えるものだった、と私は思います。
冒頭の長回しでひたすらしゃべり続けるニコラスケイジの熱演も素晴らしい。
私、この映画で初めてニコラスケイジに好感持ちましたし。
混迷と喧騒を外部から突き破ったかのようにもみえるエンディング、晴れ渡る空の下でのラストシーン、嵐そのものを事件になぞらえるなら実に象徴的だったと思います。
連続性、ですかね。
結末までカードをきる手が一切よどまないんですね。
90年代のデパルマのフィルモグラフィーの中では私にとってカリートの道と並んでフェイバリットですね。