別離

2012 イラン
監督、脚本 アスガー・ファルハディ

別離

ベルリン国際映画賞金熊賞を始め、各国の映画賞を総なめにした作品。

とりあえず私、イランの映画なんてこれまで見たことがなかったので、タイトルロールやエンドロールのペルシア語が全く読めなかったのが衝撃ではありました。

この作品を見て、何よりも驚いたのは、イランのような、なにかと不自由の多い宗教国家でもちゃんと普通に家庭があって、 日本人の尺度で量ることのできる夫婦関係や親子関係が存在しているのだ、という事でした。

もちろんこの作品で描かれている家族は知識人階級であって、それですべてを判断することはできないのだろうけど、それでもどこかほっとした部分はありましたね。

戒律に縛られたイスラム圏、というと負のイメージしかなかったものですから。

不勉強を恥じ入る次第です。

作品そのものに稚拙さを感じる部分はありません。

近代化を欲する妻と、イランという国の旧態依然とした文化や因習に振り回される人たちのコントラストも見事でしたが、何よりすばらしいのはやはりこの内容できちんと心理サスペンスとして機能していることでしょうね。

物語終盤、ああ、そういうことだったのか、と驚かされます。

実は誰もがやむにやまれぬ事情を抱えていて、善意で行動しているにも関わらず、それぞれがすれちがってしまう。

そうなってしまうのはなぜか。

多分監督が問いかけているのはそこだと私は思います。

結局一番心裂かれるような思いをしたのはわずか11歳の少女ではなかったのか、とエンドロールは語りかけます。

傑作でしょう。

末恐ろしい才能を監督に感じました。

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