2015年初出 永井豪
小学館ビッグコミックス 全13巻

さて最近の巨匠の活躍と言えば、デビルマンVS闇の帝王だとか、キューティーハニーVSデビルマンレディーだとか、009と戦ってみたりとか、一時期のハリウッドなみの抱き合わせ商法が目立ったわけですが、ここにきてなんとリメイクでもないスピンオフでもない、完全新作のデビルマンの登場、ときた。
「デビルマン最終章、40年ぶりの完結編」とキャッチコピーも仰々しく、マジか!とあたしゃ書店で仰天したわけですが、いや、ちょっと待て、デビルマンちゃんと終わってるじゃないか、どういうことよ?と首を傾げつつもとりあえずレジへ。
ああ、見事餌に食いついちゃってる。
で、肝心の内容ですが、魔王ダンテ風でもあり、マジンサーガ風でもあり、でも不動明と飛鳥了が登場していてハニーちゃんっぽいのもいる、というわからなさ。
導入部のシナリオはお得意のパターンです。
なにか新しいものが始まりそうな予感は残念ながら今のところない。
ただ、両主役の名前が何故か不動勇希と竜アスカになってるんですよね。
ここに次の展開のヒントが隠されているのかもしれません。
デビルマンに対してどういう位置付けの作品になるのか、そのあたりはまるでわからないんですが、当分は連載を見守りたいと思います。
若干気になったのは細部の作画の乱れ。
でもこれはもう仕方ないことなのかもしれません。
だって御年70歳ですし。
どうか最後まで描き切ってください、と。
願うのはそれだけですかね。
さてこの作品が永井豪、最後の大作になるのか、それとも・・・。
とりあえず、これまで幾度となく裏切られ続けてきたことはもう水に流そう、と思いましたね。
だって50年ですよ。
あの手この手で50年。
途切れることなく描き続けた漫画家が、他にいるか?って話だ。
いまだ前線に挑もうとする意欲を、古いファンとしてはただただ応援したい、というのが偽らざる心情です。
<追記>
全13巻読了。
なるほどなあ、って感じですね。
たしかにデビルマンなんだけど、ひょっとするとデビルマンレディーあたりよりもちゃんとしてる、といえるのかもしれないけど、これってやっぱり「デビルマンのキャラが流用されたなにか」というのが一番理解しやすいのかもなあ、と思ったりしました。
やってることはデビルマンの世界観を再構築してかつてより緻密に描く、なんですよ。
そういう意味ではむしろ類似作より意外性がない、とすら言ってもいい。
21世紀を迎え、SFの世界も様変わりしてきた昨今、今更4次元の存在とか、デーモンウォールとか生きてる鎧とか言われてもですね、ワードセンスが古すぎて中高年ですら食傷、というのが本音だと思うんですね。
古いSFを、あえてリアルタイムで読むというおかしな作業を強いられるのを、なんとか思い入れでクリアするしかないのか、と途中までは思ってたんですけど(ま、それでもよかった。画業50年だしね)、実はこの作品、意外にも一つだけ隠し玉があって。
なんと永井先生、デビルマンをもってして「国防」を語ったりしちゃってるんですな。
かつての伝説的名作デビルマンが「国防」って・・・(いやまあ今回に限ったことではないけれど)。
大人の読者(特にビッグコミック誌)の読者を飽きさせずに引きつけるには「国防」が正解なのかもしれませんけど、もう飛鳥も不動明もどうでもいいところに物語が向かっていったことだけは確かです。
また、エンディングがねー、身も蓋もなくて。
それが可能なら、最初からやらんかい!とつっこめてしまう矛盾をはらんでて。
さて、あの手この手でデビルマン商法を展開してきた永井先生とその関係者ですが、最後には永井先生自身がデビルマンそのものにあまり興味を持てなくなってしまう状況にまで追い詰められてしまったな、と。
我々読者は、それでも氏の作品をまだ読めることに感謝すべきなのか、なんだかもうわからなくなってきた、というのが本音ですかね。