2010年初出 三部けい
スクエアエニックスYGコミックス 全6巻
ポセイドンアドベンチャーmeetsゾンビ、ってなところでしょうか。
沈没寸前の巨大客船からの脱出行を謎のゾンビが阻む、という抱き合わせなアイディアは斬新とはいえないものの私は結構好きです。
パニックホラーのプロットとして、やりようによってはいくらでもおもしろくなる可能性を秘めているように思います。
客船の構造や仕組みをきちんと調べて作品に生かしているのも好感触。
現実に大型船が沈没する場合、どうなるのか、という緻密なシュミレーションがリアリティを底上げしてますしね。
ただ、ちょっとね、キャラがステロタイプ過ぎる、というのはありました。
わかりすぎるぐらいわかりやすい冷酷な悪役であったり、一見冷たそうに見えて実はいい奴だったり、表面はいいんだけど実は酷薄で自分本位だったりと、どのキャラもどこかで見たことがあるような内面しか抱えてなくて、そこに醒めてしまった、というのはあった。
特に宮村はやりすぎだと思いますね。
総じて言えることではあるんですが、誰も彼も高校生ばなれしすぎで。
あまりに大勢の登場人物を配備しすぎ、ともいえると思います。
全部をコントロールしきれてない。
それが如実に表れてるのがクライマックスで、ラスボスとの決闘は1人に定めて1回でいい、と思うわけです。
じゃないと、せっかくの盛り上がりに水を差す。
ゾンビの正体もあえて暴く必要はなかったのでは、と思います。
これだけメディアを問わずゾンビものが氾濫する中で、もっともらしいゾンビを説明するのって、やっぱり至難の技でしょうし。
どうしても陳腐になっちゃう。
ああ、これはいいな、と思えるシーンもたくさんあったんですが、最後まで読んで、微妙にかゆいところに手がとどいてない、という印象を受けました。
あともう少し、なんですけどね。
惜しい作品だと思います。