サブスタンス

2024 イギリス/フランス
監督、脚本 コラリー・ファルジャ

サブスタンスと呼ばれる違法薬物の摂取で、『自分を2人に分裂』させた女を描く破滅劇。

サブスタンスが特殊なのは、分裂した自分がおよそ20代だろうと思われる若い自分であること。

ただし、20代の自分と、現在の自分(多分50代ぐらい)は1週間交代で交互に眠りへつかなくてはならない。

そのルールを破ると、現在の自分の老化が著しく加速してしまう。

まあその、物語のルール作りは実に巧妙だなあ、と思いますね。

こんなの守るやつがいるわけないだろうし。

誰だって20代の溌剌な頃の自分でいた方が楽しいに決まってる。

必然的に若い自分がルール破りを繰り返すようになるのは火を見るより明らか。

つまりサブスタンスの供給者は、うまくいくことはないだろうと見越した上で違法薬物を流布していることになる。

私が思うに、供給者は刹那の夢を提供してるんではないか、と。

老いという不可逆に抵抗はできないが、条件付きでいいなら、少しの間、もう一度若さを満喫することはできますよ、みたいな。

ほとんどのケースで自滅しちゃうけどね心の声)って。

いやいや笑ゥせえるすまんかよ!と。

あまりの腹黒さに恐れ入りますが、商売としちゃすげえ集金システムだなあ、と思ったり。

こんなのショービジネスの世界で生きてきた人たちなら手を出さない理由がないし。

そう思わせるところにこの作品の作劇のうまさがある。

正直ね、こんな薬物、ドラえもんの四次元ポケット漁らなきゃ無理と思いますけど、説得力の高さがリアリズムを上回ってる、というか。

最も自分を裏切るのは自分、としたのも見事。

また、あちことで言われているようにデミ・ムーアの体をはった演技がほんと凄くて。

普通、60代でフルヌードとか、やらないし、本人がやるって言ったって周りが阻止するって話だし。

もう見てて悲しくなるほどでしたからね、ゴースト(1990)の時はあんなにかわいかったのに・・・って。

で、それこそがまさに監督の思うつぼだったりするわけで。

ルッキズムを批判するのはたやすいが、実際にあなたたちはルッキズムに振り回されてるでしょ?これを見ても違うといえる?とばかり、デミを贄としてささげてるんですよね。

もう「ごめん」というしかない。

テレビ番組のプロデューサーや関係者の、ディフォルメされたスノッブぶりや汚らしさの演出もそう。

こんな連中が『美』を支配してるのよ?それでもあなたは若さに価値を見出すの?と。

だから「ごめん」ってば!

極めつけは終盤の展開ですね。

たいていのホラーには免疫のある私ですら、ぶっちゃけ引いた。

いやこれエグすぎるやろ、と。

まさかこんなオチが待ってるとは思わなかったから、虚をつかれたというのもあるんですけどね。

もうこれクローネンバーグやん、って。

ほぼボディホラーだし。

舞台のシーンとか、ブレインデッド(ピーター・ジャクソンのカルトホラー)思い出したぐらいですからね。

またラストが徹底的に救いがなくてねー。

これ「ちょっといやな感じの人間ドラマ?それともサスペンスなのかな?」みたいな感じで心構えなく見た人とか、トラウマになるんじゃないかと思いますね。

山野で食用キノコとってきて、焼いて食ったら実は毒キノコだった、みたいな感覚ですね、マジで。

おもしろくなかったわけじゃないんだけど、スパイス効きすぎてて舌麻痺した、みたいな。

観ようと思ってる人はご覚悟を。

私は正直、ちょっと「嫌なものみた」と思ってたりします。

ねじレート 86/100

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