クワイエット・プレイス:DAY 1

2024 アメリカ
監督、脚本 マイケル・サルノスキ

なぜか3作目にして前日譚に逆戻りという暴挙?をぶちかました意図不明の最終作。

いや、最終作じゃないのかな?確か三部作と言ってたように思うんだけど、DAY1とか言ってるしなあ、評判よかったら平気でDAY2とか作りそうだな、こりゃ。

一応、位置づけとしてはスピンオフらしいんで、シリーズを継続しようが今作のみで終わろうが、どちらでもいいわけです。

結局三部作、ってなんのことだったの?って話にはなりますけどね。

これで4作目を作る、って既報があれば問題なかったんですけど、今のところ気配すらないしなあ。

前作、破られた沈黙(2021)はいったいなんだったんだよ、という。

三作目で完結する、と思っていたからこそ、途中でぶった切ったような内容でもみんな文句言わなかったんであって、続きはない、と知っていたら誰も評価しないし、そもそも見もしないと思うんですよね、前作。

こういうのを丸投げと言うんであって。

誰に責任があるのかわからないけど、やってることはあるある詐欺とおんなじなんでね、みんな怒っていいと思いますね。

商業映画として発表して客から金取ってる以上は責任持って物語を結ぶべき

制作会社が潰れたとか、制作を担う中心人物が死んだとかなら仕方ないけど、スピンオフ撮ってる余裕があるなら、先にやることあるだろう、って。

こういうことやってると結局軽んじられてしまうんですよ、映画そのものがさ、これからの若い人たちに。

クワイエット・プレイスをたまたま見て映画に興味持った、って人たちがもしいたらさ、絶対に失望してるよ、今頃。

で、可哀想なのは丸投げの後始末を押し付けられたDAY1の監督、マイケル・サルノスキで。

「仕切り直しでクワイエット・プレイスやりたいんだ、どうだ、監督やってくれるか?」って言って引き受ける人材はまずいないわけですよ、前作までのチームリーダー、ジョン・クラシンスキーは製作総指揮でサポートに廻る、などと言われてはなおさら。

ま、舅が目を光らしてる伝統ある旧家に嫁入りするようなもんですわな。

そりゃ賢い監督は遠慮する(ジェフ・ニコルズのように)。

「絶対に君のキャリア・アップになる!」とかなんとかうまく言い含められたんだろうなあ、マイケル。

PIG(2021)で注目されて、今すごく大事な時期ですもんね、ひょっとしたら「ゴジラ、ローグ・ワンと大きな仕事をこなし、近年ビッグバジェットで自分の撮りたい映画(ザ・クリエイター)を撮ったギャレス・エドワーズのように、君もなりたくないか?」とか言われたのかもしれない。

いや、知らんけど。

どうあれ、結構な貧乏くじだと思うんですよね、前日譚やりますよ、って企画自体がね。

そもその期待値が決して高くはない。

ところが、だ。

そんな逆境を見事跳ね返してきましたね、監督は。

いや、びっくりした。

面白いんですよ、これが。

下手すりゃ1作目にすら肩を並べるレベル。

実に利口だったのは、前日譚という縛りに囚われず、襲来する宇宙からの侵略者どもを単に「死をもたらすもの」として記号化したこと。

いや、侵略SFで対モンスターバトルなのは間違いないんだけど、物語のメインストーリーが見知らぬ者同士が生死をかけて道行きを共にする日々を追うことだったりするんですよ。

いやこれどこのアメリカン・ニューシネマなんだと。

至極、大人目線なんですよね。

一部の人は言ってますが、どこかモンスターズ/地球外生命体(2010)にも近しい雰囲気があって。

また同時に、この物語がもたらされた死ではなく、自分が選択した最後を、自分の意志で迎えるためのあがきを描いてることが私はすごく興味深かった。

そこにあるのはまさに人としての尊厳だと思うんです。

終盤、エリックが思いを断ち切って船に向かって走るシーンなんて必殺の名場面と言う他ない。

安易に色恋へと着地しない展開もいい。

いや、涙腺やばかったですね、私。

まさかまさかクエイエット・プレイスで胸打たれるとは微塵も思ってなかったですよ。

お見事、マイケル・サルノスキ。

彼が監督するならDAY2も見るぞ、私は。

ひょっとしたらシリーズ最高傑作かもしれません。

ション・クラシンスキーは軽く嫉妬したんじゃないですかね「俺が作ったから!俺のクワイエット・プレイスだから!」みたいな。

いや、知らんけど。

おすすめの一作、これまでと雰囲気は全く違いますが傑作だと思います。

ねじレート 91/100

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