2024 韓国
監督、脚本 チャン・ジェヒョン

怖さももちろんあるが、それ以上に、意外性のエンタメホラーとして秀逸
改葬の儀式を引き受けた巫堂と風水師の、予想外な惨事を描いたオカルトミステリー。
ちなみに巫堂(ムーダン)とは韓国の土着信仰に根差す職業シャーマンのことで、神をその身に卸し、お告げやお祓いを行う存在のこと。
沖縄のユタに近い存在、と考えていいように思います。
風水師に関してはまだなじみがあるかと思うんですが、簡単に説明するなら陰陽五行説を根拠に、環境の診断とアドバイスを行う人のことで。
作中の風水師は何やら墓に関することを専門にやってる風ですけど。
私は巫俗なんて今まで漫画でしか読んだことがなかった(黒巫鏡談とか)んで、実際に映像でトランス状態に舞い踊るムーダンの姿、ってのが実に新鮮に感じられた、ってのは確かでした。
所作や小道具がね、いわゆる神道のお祓いの儀式のみならず、仏教ともエクソシズムとも似てなくて。
ムーダンを演じるキム・ゴウンが、眼光鋭い美形なのも役柄にかっちりはまっていたように思います。
舞う姿がなまめかしくも鬼気迫る感じなんですよね。
そこに初老の風水師が加わって、祟りの大元と思われる100年前の墓を掘り返す、ってんだからオカルト好きとしちゃあ、えー、なに!なに!なにが出てくるの!とワクワクせざるを得ない。
なんだろ、伝奇ホラーっぽい質感があるんですよね。
もちろん気味悪さ(立ち入りが禁じられた山の頂上にポツンと建てられた粗末な墓の絵面とか)や不穏さは存分にちりばめられてるんですけど、それよりも「いったいここには何が隠されているのか?」といった好奇心のほうが勝る、というか。
ありきたりな「先祖の祟り」とか「ホーンテッドハウスもの」「地縛霊」等々、この手の映画で散々使いまわされたパターンに堕していない、と言えるように思います。
なんせ韓国の風水師や巫堂について全く不案内なものだから、物語がどういう展開を見せるのか、全く予想がつかなくて。
全く違う文化のダークサイドに触れる手触りがあるんですよね。
また、中盤以降、なんとかなったのかな?と思わせておいて、とんでもなく忌まわしい隠し玉でさらなる恐怖を煽る進行もお見事。
いやほんとにね、こんなものが出てくるなんて、かけらも想像してなかったですね、私は。
ふいにジェーン・ドゥの解剖(2016)などという映画を思いだしたり(予想の外側という意味で)。
暴かれた呪いの正体にも驚愕。
よくぞまあ、こんなの、引っ張り出してきたな!!って。
いい意味で発想にひねりがある。
そりゃね、重箱の隅をつつくなら、小さな矛盾や齟齬はありますよ、なぜそうなる?と思ったところも一箇所や二箇所じゃないですし。
でもこういう作品って、ダークファンタジーでいいと思うんですよね、私は。
かつてこの地で殺された女の呪いとか、犬〇村とか想像力の貧相な怪談話のテンプレートでまとめちゃうぐらいなら、多少の違和感引きずりながらも意外性を大事にした方がよっぽどいい。
だいたいそんなの気にしてたら呪術廻戦とかどうなるんだよ、って話だ。
大ヒットしてんじゃねえかよ、って。
ま、さすがに呪術廻戦とまではいかないんですけどね、異文化呪術対決の様相は呈していた、とだけ。
いや、面白かったですね。
意外とホラー好き以外にもアピールしそうな気がしますね。
チャン・ジェヒョン監督、俄然気になってきました。
ハッタリというと失礼かもしれませんが、こういうブラフのかまし方や、全部見せない恐怖演出等、好きなんですよね私。
少なくともきっちりポイントは抑えてる気がします、墓を埋葬したのが日本人のキツネ、とかね。
良質なエンタメだと思いますね。
ねじレート 89/100

