ホテル・エルロワイヤル

アメリカ 2018
監督、脚本 ドリュー・ゴダード

ホテル・エルロワイヤル

カリフォルニア州とネバダ州の境目に建つ寂れたホテル、エルロワイヤルに偶然立ち寄った男女7人が迎える「惨劇の夜」を描くサスペンス/スリラー。

物語の立ち上がりは「どこかで見たような・・・」って感じです。

あえて映画史を紐解くまでもなく、ヒッチコック先生を皮切りに、0年代には似たようなプロットでアイデンティティー(2003)という傑作もあったことですし。

国内でビデオスルーされた原因はそのあたりにあったのかなあ・・と思ったりもしたんですが、だからといってこの作品を侮ってはいけない。

なんせ監督/脚本がドリュー・ゴダードですから。

既視感を逆手に取った仰天の展開で我々を震撼させたキャビン(2011)の衝撃はまだまだ記憶に新しいところ。

今回も一筋縄で終わらせるようなことは決してしないだろうと。

予想は的中してましたね。

まあ、こねくりまわすこと、こねくりまわすこと。

登場人物全員が「見たまま」の人物ではないことを、薄々感じてはいたんですが、7人が揃いも揃ってどうやら裏の顔がありそう、ときた。

厳密に言うと全員がそうではなかったんですけど、もうね、中盤ぐらいで誰が本当のことを言ってて、誰が嘘をついているのか、さっぱりわからなくなってきます。

そんな混乱状態の最中で、実はホテルそのものにも大きな秘密が隠されてそう、と監督は匂わせてくる。

一寸先の展開すら読めません。

なんせ7人の物語が同時に進行していきますから。

散りばめられた謎が蜘蛛の巣のように絡み合い、それぞれがそれぞれの利害関係でもって牽制し合うシナリオ進行は恐ろしく緻密で、集中力を途切れさせぬものだったと思います。

見せ場も盛りだくさん。

特にシンシア・エリヴォが室内で一人、歌い出すシーンなんて手に汗握る緊張感。

で、ドリュー・ゴダードがすごかったのは、おそらく「あの2人」の物語でまとめるんだろうな、と思わせておいて、クライマックスで全く別の場所から大きなトラブルを持ち込んできたこと。

こんなことして、どうするつもりだ、とマジで思った。

だって打開策が全く見当たらないし、待ち受けるのは悲劇的結末でしかないように思えましたから。

まさかあの人物が、最後の最後に大活躍するとは想像すらしませんでしたね。

なんたる周到さか、とあたしゃ舌を巻いた。

しかもね、ほのかに感動的だったりもするんですよ。

主人公自らの悪徳を、事件の経過そのものが戒める構造になってるんですよね。

いやもうすげえシナリオだな、と。

お見事、傑作だと思います。

なんかもう円熟味すら感じられる一作でしたね。

ちなみにこの作品、1969年を舞台としてるんですけど、エルロワイヤルにはモデルとなった実在のホテルがあったようです。

マジか、って話だ。

明らかにチャールズ・マンソンだな、と思われる人物も出てきますしね。

70年代前夜のアメリカを伝える物語としては、ひょっとしたらタランティーノの話題作、ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド(2019)より饒舌かもしれません。

おすすめですね。

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