黒部の太陽

1968 日本
監督 熊井啓
原作 木本正次

当時、世紀の難事業と言われた長野県黒四ダムの、建設工事に従事する人々を描いた群像劇。

石原裕次郎の意向で長年メディア化されず、見たくても見れない伝説の邦画タイトルだったはず、と記憶してるんですが、先日、たまたま寄ったビデオ店の棚にしれっと並んでてびっくり。

調べてみたら2013年に解禁されたんだとか。

全く知らなかった、解禁からもう10年も経ってるじゃねえかよ。

ま、えてして映画ファンってのは入手困難とか、DVD化されてないとか言われると胸の奥がざわざわしちゃうもので。

見た人の口コミなんか読んだ日には、居ても経ってもおられんぐらいやきもきしてしまったり。

ま、レコードやCDでも同じなんですけどね、すごい値段がついてるものに限って「実はとんでもない名作なのでは・・・」と勘ぐること、マニアの必定。

そりゃね、あれば見るさ、幻の一作ですもん、たとえ石原裕次郎に興味がなくとも。

話はそれますが、裕次郎って、いったいどこがいいんでしょうね?

私は昭和生まれのおっさんだけど、裕次郎がかっこいいとも、すごい役者だと思ったことも一度たりとてない。

それは本作を最後まで見ても変わらなかった。

三船敏郎や、志村喬は今見てもすごい役者だ、と思うんですけどね、裕次郎だけはなんかピンとこない。

同時代を生きた人に石原裕次郎へ対する熱狂とはどういうものだったのか、聞いてみたいところですが、もう、みんな死んじゃってるしなあ。

なので裕次郎と三船敏郎のダブルキャストに心躍らされるものはないんですけど、監督が名匠熊井啓なんでね、少なくとも出来が悪いってことはないだろう、と。

そしたらだ。

これがねえ、スケールの割にはさっぱり盛り上がらなくてですね。

三船演じる北川と関電上層部のやりとりとか、裕次郎演じる岩岡剛とその親父の衝突を描くドラマとかはそれなりに見応えはあったんですけど、肝心のトンネル工事の場面が図面でごにょごにょ説明するだけで、どう難工事なのか、全く絵で説明できてないんです。

鉄砲水のシーンは相応にすごかったんですが、それが黒部ならではのヤバさとして伝わってこなくて。

極端な話ね、実は近所の山でセット組んで撮りました、って言われてもそう違和感ないと思うんですよ。

なんせトンネル内で閉所だから難しいとは思うんですけど、工事の大変さに焦点を当てるのならね、そこは知恵を絞ってカメラワークや演出でさらにひと工夫して欲しかった。

これだと、あーひたすら人海戦術なんだなあ・・・という印象しか残らない。

前時代的な、人足を管理する大変さを映画にしたかったわけじゃあるまいに。

なんせ関電の協賛を得て作られた国内初の企業タイアップ映画なんで、監督が本当に描きたかった部分が、色んな思惑や忖度が絡んでカットされたのかもしれないですけどね、それにしたって骨抜きだな、と思った次第。

人間ドラマとしても、社会派ドラマとしても、よしんばフェイクドキュメンタリーだったと考えても低調ですね。

辛辣なことを言うなら事実を時系列に沿って列挙していった再現ドラマ、って感じですかね。

再現ドラマの割には役者陣が恐るべき豪華さですけどね。

すでに評価は固まってる映画だと思うんでね、私が何を書いたところで今更揺るぎはしないでしょうし、もう名作でいいと思うんですけど、老婆心ながらあんまりハードル上げすぎないほうがいい、とだけ。

ま、いつの時代も実話ものは難しい、ってことですかね。

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