アメリカ 2006
監督 クリストファー・ノーラン
原作 クリストファー・プリースト

世界幻想文学大賞を受賞した「奇術師」を映画化。
19世紀ロンドンを舞台に、マジックに全てをかける二人のマジシャンの嫉妬と怨嗟渦巻くライバル関係を描いた作品。
基本、人間ドラマなんですが、どこまでが当時の手品師を取り囲む世界に忠実なのか、よくわからない部分もあって、ある種のファンタジーというとらえ方も出来るかもしれません。
物語の中核にあるのは舞台に全てをかける手品バカの妄執。
どうすればライバル以上のマジックを披露することができるか、すべてはそこからストーリーが発展していくんですね。
思わぬ事故が産んだ確執や、二人の間でさらに溝を深めるような行動を取る女性の存在などあったりはするんですが、 つまるところ、演者の苦悩がそのテーマ。
ですんで私はそういう方向で落とし所が用意されているもの、とてっきり思い込んでいたんですが、そこが何故かすんなりいかない。
まるで予想外の場所へとシナリオは飛躍。
もし評価が別れる、としたらきっとその意外性が原因になってるんだろうなあ、とは思います。
あっ、と言わされはするんです。
まさか最後にあんなオチが待ち受けてるとは思いもしませんでしたし。
でも、求められているのはそういうことじゃないだろう、という気もすごくする。
とりあえず、ニコラ・テスラが登場するあたりからかなりあやしい感じにはなってくるんですね。
余談ですが、テスラを演じているのがデビッド・ボウイだったなんて、私はクレジットを見るまで気づきませんでした。
驚いた、私だけ?
ま、そりゃいいか。
もうね、極端な話、SFじみてくる、と言ってもいいと思います。
必ずタネがあるはずのマジックの世界に擬似科学めいたガジェットを持ち込む発想は嫌いではないんですが、なんといいますかドラマとの食い合わせがあんまり良くないように私には感じられた。
やっぱりね、なぜボーデンは手首に縛った紐をどう結んだか「覚えてない」などと言ったのか、そこをしっかり解き明かしてこその終幕だったのでは、と私は思うんです。
それでこそ二人の確執も子供じみたライバル心の向こう側も、見透かすことができる。
そこまで憎まなきゃやりきれないのか?と、あまりの事態のエスカレートぶりにもやもやしたものがどうしても残るんですね、このままだと。
サスペンスとしては優秀だったかもしれませんが、なんか置き去りにされてるものもいくつかあるのでは、と私は思いました。
ノーランらしい大作だとは思うんですが、なんとも評価の難しい作品ですね。