1976年初出 手塚治虫
今はなき少女漫画雑誌リリカに掲載された作品。
伝説の一角獣であるユニコーンの子供、ユニコを主人公にしたディズニーアニメ風の寓話、というかおとぎ話。
美の女神、ビーナスの反感をかい、時空を超えて常にさすらわねばならないユニコの数奇な運命を描いた物語なんですが、時空を超えるたびに記憶を消されてしまう、という設定になってまして、もうなんていうかですね、大人の保護欲を恐ろしいまでに刺激する漫画ではあります。
あまりにけなげではかなげで数ページ読んだだけで私はわなわなと震えてしまいました。
「ぼくなにもおぼえてないの。なにもわからないの」
と、毎回ユニコはオープニングでつぶやくんです。
思わず目頭を押さえて、よしわかった、あとは全部おっちゃんにまかしとき、なんも心配はいらん、ついてきたらええ!となけなしの義侠心をありったけさらけだしてしまいそうになることうけあい。
ユニコの造形のかわいさも他の著作に比べて群を抜いています。
久しぶりの少女漫画、と言うことを先生は意識したのか、もうセーブすることなくなにもかもまるまっちくてファンタジックで。
はっきりいって内容や設定に若干の強引さはあるんですが、手塚少女マンガの集大成とも言えるこの作画の美しさは一読の価値有り、といえるでしょう。
ちなみに本作、禁断の左開き漫画。
恐ろしく読みにくいんですが、何とか乗り越えましょう。