アメリカ/フランス/カナダ 2000
監督 キャスリーン・ビグロー
原作 アニタ・シュリーヴ
19世紀後半に起きた殺人事件を記事にしようと、孤島を訪れた男女4人が、事件を調べていく内にあれこれ揉めだすお話。
原作は全米ベストセラー小説らしいんですが、映画の評価はふるわず興行成績も惨敗、日本国内においてはビデオスルーされてます。
ま、そりゃそうだろうなあ、と思います。
端的に言っちゃうなら文芸作品風の路線に色気見せてるんですよね。
で、それが恐ろしく面倒くさいし、まどろっこしい。
ストレンジ・デイズ(1995)で歴史的大赤字を記録したビグローですんで、失地回復を目論んでの方向転換なんでしょうけど、違うことをやろうとして自分が得意とするアプローチや映像表現を全部捨てちゃってるんですよね。
女性監督らしくない骨太さ、エンタメ性が売りだったはずなのに、センシティヴな演出、重層的な内面心理を描写することに心砕いてるんです。
結果、いかにも女性監督が撮った映画と揶揄されそうな内向きなドラマに。
誰もビグローにこんなの期待してない、という話で。
やっぱり最大の難点は、現代と100年前の事件が交互に進行していく構造なのにも関わらず、現代劇のドラマ進行が退屈極まりなかったこと、でしょうね。
なんでこの連中はこんなに浮世離れしてるんだ?みたいな。
100年前の事件の顛末を追ってる方が遥かに面白いんです。
もういいから、さっさと過去を映せよ、ってなっちゃう。
物語は最終的に現代の出来事と過去の事件をシンクロさせたかったみたいなんですが、現代における4人の関係性がなぜ過去と交わる羽目になるのか、あまりに曖昧模糊としたままはっきりとさせない作劇も良くなかった。
そんなところで我々の想像力を試してくれなくてもいいんだよ、って。
結局、過去の事件の重要人物を演じたサラ・ポーリーの映画になっちゃってるんですよね。
というか、最初からマッティノーズ島殺人事件の謎だけ追ってりゃいいじゃない、と思えてきてしまう。
文芸とサスペンスの同居は難しい、それを実感させられる一作です。
野心的と言えるのかも知れませんが、監督の適性を無視してまでやることじゃないですね。
ひょっとしたらビグロー本人は楽しかったのかもしれないな、と思ったりはしますが。