カナダ 1979
監督 ピーター・メダック
原作 ラッセル・ハンター

幽霊屋敷ものの大傑作、と呼んでさしつかえないと思います。
派手な血飛沫や、惨殺描写にグロなシーン等は一切なく、どちらかといえば古典的な演出を遵守した作品なんですが、これがもう半端じゃなく怖い。
たいていのホラーには免疫のあるやさぐれたオッサンですら何度見ても震え上がってしまうんだから、これを本物と呼ばずして何を本物と呼ぶのか、と言う話であって。
まず、特徴的なのは音響。
ぽろん、とこぼれるピアノの音から始まって、心臓に響くような打突音まで、その使い方が本当に絶妙なんですね。
見事なタイミングでここぞとばかり切り込んでくるケースもあれば、全く予想すらしえなかったシーンで突然神経を逆なでするように鳴り響くケースまで、変幻自在に観客を翻弄。
凄いのは、そのどれひとつとして恐怖を煽る意味ではずしてないこと。
なにも薄気味悪いものや人あらざるものが画面に映ってるわけじゃないんです。
ただ屋敷の内部を映してるだけなのに、聴覚が得体の知れぬ恐怖を感じてその対象を映像から見つけ出そうと血眼になってしまう。
こんなことって滅多にありません。
ローアングルとハイアングルにこだわったカメラワークも実に計算されてて見事の一言。
え、なに、そこに何があるの?なんでそんな場所から主人公を映すの?と、嫌な想像が膨れ上がること、連続しておびただしく。
挙句にはボールが転がっただけで飛び上がる始末。
スピーディーなカット割りも効果的だったように思います。
えっ、ってところで、ばつん、と切って早々と次のシーンへと行くんですね。
ひっぱらない分、どんどん不穏さばかりが蓄積されていくというか。
また、昔ながらのホラーのセオリーを順当になぞるだけでなく、終盤にはサスペンス色すら醸していたのも意外性があってよし。
見せない恐怖、奇異なるドラマを演出する上で、これはもうシナリオ、音響、映像の三位一体が調和して完璧だ、と私は思いましたね。
一級品のホラーだと思います。
なんかもう品格すらある、と私は感じた。
褒めすぎかもしれませんがシャイニングの次ぐらいには来るぞ、これ、と思った次第。
ホラー好きには是非見て欲しい一作。