2018年初出 賀来ゆうじ
集英社ジャンプコミックス+ 全13巻

極楽浄土と噂される謎の島から、不老不死の仙薬を入手すべく送り込まれた死罪人と監視役の首切り役人の、決死の探索行を描いた時代劇アクション。
無罪放免を餌に、犯罪者どもに極めて遂行が困難なミッションを強いる、というのは時代劇のみならずよくあるパターンだったりはしますが、この作品が優秀だったのは「お役目を果たす舞台が人知を超えた生態系に支配された悪夢の島であった」という設定でしょうね。
なんせ冒頭からいきなり触れると人体が樹木化してしまう蝶が飛んでたり、仏像をディフォルメしたような怪物が襲い掛かってきたりするんですよ。
ドクター・モローの島(1977)も真っ青な狂いっぷりでして。
人あらざる者のデザインがどこかで見たような感じだな・・と思いつつも、怪物は絵的に気持ち悪すぎて、ホラーかよ!とつっこんでしまうほどにワクワクするし、蝶を含めた島の防衛線も謎すぎて、先が読めない期待感が膨らむ一方。
何より私が感心したのはどうやら仙術や方術、しいては道教が、島のなりたち、生態系に大きく関わっているようだ、としたストーリー展開。
いやもう徐福なんてね、本当に久しぶりに漫画で目にしましたね。
ひょっとしたら諸星大二郎以来じゃないか?ってなぐらい。
大陸文化由来の気味悪さが支配する世界観はまちがいなく独特だった、と言っていいでしょう。
物語の対立図式がね、忍術や剣術VS陰陽五行に支配された不死の気功使い、ってな案配になってるんですよね。
これはねー、否応にも胸躍る。
磨き上げられた技術(武術)は、超常の力を打ち破ることができるのか?って、ことですから、いうなれば。
俄然、バトルにも上陸者たちの知恵と工夫が加味されるわけです。
絶対勝てないところからどうひっくり返していくか?がテーマになるわけですから。
これが面白くないわけがない。
ただ、そんな優秀な設定とは裏腹に、いささかキャラクターの作りこみが甘かったのは事実で。
主人公画眉丸や、山田浅ェ門佐切あたりは比較的丁寧に描かれてるんですけど、サブキャラに雑な扱いだったり、頭数合わせみたいなのが何人かいて。
登場頻度が高い割には民谷巌鉄斎や杠とかの内面、スッカスカですからね。
人物の背景が全く見えてこない。
ヌルガイなんて何のために登場させたのか全然意味わからないですし。
あと、幕府の首切り役人である山田浅右衛門に着目したまでは良かったんですが、浅右衛門が10人以上いる、ってな想定もどうかと思った。
山田浅右衛門という無二の屋号が変に薄味になっちゃうんですよね、増殖しちゃうと。
山田浅右衛門を含む幕閣の達人武芸者たち、ではなぜダメだったのか、と。
佐切を女性にしたのも疑問。
主人公と女性でパートナー組ませるなら、主人公を妻帯者にしちゃ絶対だめだろう、って。
あれ、ひょっとして佐切と画眉丸はいい仲なのか?付き合っちゃうのか?みたいな勘ぐりが入り込む余地がないですしね、現状だと。
せっかくのおいしい引きを出足早々ドブに捨ててどうする、と。
さらに言うなら、バトルの描写は申し分なかったが、探索行が一本道過ぎて盛り上がりに欠ける、というのもあった。
上陸→化け物だらけで大変→力押しで本丸突撃、以上、なんですよね。
シナリオ、スカスカやないかい、と。
なんか気が付いたら批判ばかり書いてる有様ですが、まあその、決して面白くなかった、というわけではなくて。
序盤の展開の優秀さが、お話が進むにつれ凡俗に、ってなところですかね。
いかん、また批判っぽいこと書いてる。
いや、嫌いじゃないんです、はがゆい感じなんですよね、ここまでできるのになぜ?って。
ラストは相応に感動的です。
私みたいなオッサンはともかくとして、多分、若年層は全部持っていかれると思う。
アニメ化も納得の一作ではありましたね。
次作に期待。
この発想の独特さをキープできるなら、いつかとんでもないものを描くと思います、賀来ゆうじ。

