ラフナス

2014年初出 白井弓子
双葉社アクションコミックス 全2巻

反重力物質ラフナが支配する星で、流域観測士を務めるリマと、先祖返りゆえラフナの影響を受けないラギ、二人の特別な出会いを描いた異世界SF。

ま、この説明ではなんのことやらさっぱりわからんことと思います。

というか、簡便にまとめようが、懇切丁寧に細部に至るまで説明を尽くそうが、わかりにくさは変わらん気がするんですよね、この物語の場合。

「絵」で見てもらうのが一番なんですよ。

多分私の百万語より、見開き2ページのほうがはるかに物語世界の現実を把握できるだろうと思われます。

要は、重力が等しく働かない世界なんですね。

いくつもの岩石が中空を漂い河を成していたりする。

リマは重力の縛りを受けないあれやこれやを、人の世界に危害を及ぼすことがないかチェックする仕事をしてるんです。

かたやラギはラフナの影響を受けない体質なんで、普通に重力に縛られ、彼にしか出来ない鉱山仕事等に従事してる。

二人のキャラクターといい、物語世界の有り様といい、なかなか面白い着想、設定だな、とは思いました。

これってね、視覚的に訴えることでよりイマジネーションが広がっていくプロットだと思うんですよね。

漫画には(映像でもいいけど)最適だな、と。

特に岩河を泳ぐリマの姿とか、どんなに頑張っても文章で的確に伝わらないでしょうしね。

絵を見てるだけで「ここではないどこか」へ一気に心が連れていかれる。

ああ、これってまさにSFの醍醐味だよなあ、って。

ただね、この物語、いささか残念なのは「重力が等しく働かない世界」で、その世界ならではのストーリーが魅力的に展開していかないことで。

この岩河は危険だ、ってネタだけで最後まで引っ張ろうとしてて。

作者はあんまり意識してないかもしれませんが、いうなれば我々の世界における「もうすぐ地震が来るかも」みたいな、迫る天災に対する恐怖だけでお話を紡いでいこうとしてる節がある。

普通に考えて、地震来るかもよ?に対する反応って、えー怖いね、ないしは、へー、だと思うんです。

次の瞬間にはもう別のこと考えてると思うんですよ、私達は。

だって予想を裏付ける明確な根拠がないから。

危険な世界に生きる人達の暮らしぶりや、その世界ならではの危機管理を描きたかったんでしょうけど、それを主筋とするにはあまりに盛り上がらないわけで。

でまあ、結局リマとラギの惹かれ合う思いを村の危機に寄り添わせる作劇として、テコ入れをはかったわけですが(これはもともとの計画どうりだったのかな?)今度はあんまり恋愛を描くのが上手じゃない、という作者の不手際が浮き彫りになる始末で。

これはリマというキャラクターをうまく操れなかった、といったほうがいいのかな。

うーん、なんか独特な世界観の割には、独特な世界観だけですべてが閉じてしまった印象ですね。

嫌いじゃないんですが、どこかぱっとしなかった、というのは厳しすぎるでしょうか。

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