2018年初出 柴田ヨクサル
小学館ヒーローズコミックス 1~16巻(以降続巻)

不惑を迎えてすら、本気で仮面ライダーになりたいと切望するフリーター、東島丹三郎のままならない人生の転機を描いたヒーローアクション。
正直、なんか二次創作っぽいな、と感じる部分はあったんです。
基本、仮面ライダーありきで、しかも昭和ライダーを原体験とする人たち向けの内容だったりするんで。
一号ライダー本郷武や、V3風見志郎を知らないと楽しめないところもありますし。
ましてや本作のヒロインでもある電波人間タックルなんて、仮面ライダーストロンガーを見てた人でさえ強く印象に残ってる、ってことはないと思う。
私は直撃世代だけど、当時の子供はみんながみんな、キカイダーに登場するビジンダーに夢中でしたから。
タックルなんて完全にストロンガーのそえものでしたしね。
で、そんな存在すらも引っ張り出してくる、ってことはコアなマニア層に訴えかける要素が高い、ってことで。
くすぐりがね、マニアックなんですよね、ただでさえ40~50代ターゲットだというのに。
ぶっちゃけこういうのは同人でやるべきでは・・・と思わなくもないんですが、それがいつの間にかアニメ化だもんなあ。
凄い時代になったものだ。
人のネタでふんどし締めて相撲とっても文句言われるどころか、商業ベースにのせようとするやつが出てくるんだから。
私が思ってる以上に今の子供はアニメ見てないんですかね?ひょっとして。
おじさん連中ばかりなのか?視聴者は?知らんけど。
ま、登場人物たちが誰一人として本物ではない(1号ライダーもV3もタックルも改造はおろか、誰かにやってくれ!と背中を押されたわけでもない、すべて自称の痛い人たち)中、偽物同士でショッカーとライダーに分かれて戦う展開は、まったく先が読めなくて興味深くはありました。
このまま虚構(ごっこ遊び)に虚構(ごっこ遊び)を積み重ねていくのか?とドキドキしたのは確か。
いわゆる『序盤はやたら面白かった』ってやつ。
よろしくなかったのは本物と思しきショッカー戦闘員と怪人が現れてから。
偽物ライダーたちが本物のショッカーに抗する展開になるんですが、驚くべきことにそこから(3巻ぐらいかな?)全く話が進まないんですよね、この漫画。
普通なら、なぜショッカーが存在するのか?いったいどういった組織なのか?そしてどうして何十年もの間、その存在が表に出てこなかったのか?いや、本物のショッカーがいるなら本物のライダーもいるはずでは?等、物語の中で少しずつ明かされていくべきだと思うんですが、16巻も費やしておきながらやったことといえば、やたら登場人物を増やしたことと、東島丹三郎が人間なのにショッカーといい勝負をしたことだけですからね、あまりの進展のなさに読んでて呆れたよ、私は。
柴田ヨクサルはこの作品をナンセンスコメディだとでも考えてるんですかね?ほんとそれぐらいのレベルで全く世界を掘り下げようとする気配がない。
我ながらよくぞ16巻まで読んだな、って今少し思ってます。
この先、どこかで劇的に変わるとも思えないんで、私はもういいかな、この漫画。
うまくやればライダーの世界観を現実から俯瞰する、二重構造の稀有なフィクションになり得たと思うんですが、多分、作者にその気はないんでしょうね。
どうでもいいんですが、それにしても作者は一向に絵がうまくならんなあ、って。
バカみたいなバストの女子ばっかり登場するけど、1ミリもエロくない、ってのは希少事例だと思いますね。
うーん、ライダーへの愛だけは伝わってきたかな。
そんなとこ。

