アメリカ 2020
監督 クリストファー・ランドン
脚本 クリストファー・ランドン、マイケル・ケネディ
連続殺人鬼と女子高生の中身が入れ替わってしまう滑稽さを描いたコメディホラー。
ネタ的には、よくあるパターンと言ってしまえばそれまでなんですけど。
古い映画ファンなんかは大林宣彦の転校生(1982)を思い出すでしょうし、最近じゃあ君の名は(2016)なんてのもありましたし。
ただ、この映画が特徴的だったのは、入れ替わりコメディに「殺人鬼」と「女子高生」という、ともすれば加害者と被害者になりかねない、両極なキャラクターを用意してきたことでしょうね。
アイディアは悪くない、と思うんです。
誰かがやってそうでやってない、盲点とも言える着想だったと思う。
なんせ監督はクリストファー・ランドンなんで。
ハッピー・デス・デイ(2017)シリーズがお気に入りな身としては、なにかやらかしてくれるんじゃないか、と期待値も高まろうというもの。
ま、面白くならないわけがないんです。
殺人鬼が女子高生を、女子高生が殺人鬼を演じるわけですから。
実際、殺人鬼を演じたヴィンス・ヴォーンはよく研究してる、と思いましたし。
監督の演技指導や演出もあったんでしょうけどね、頭にタオル巻いて出てくるシーンや、彼氏との車中でのシーンは失笑してしまいましたしね。
ちゃんとギャップを活かしてる。
反して、女子高生を演じたキャスリン・ニュートンがいささかなりきれてないか、と思ったりもしたんですが、ま、これからの女優さんでしょうし、そこは目をつむろう。
普通に菓子でもつまみながら見てるぶんには全く問題ないし、十分及第点でしょうね。
若干、エグめのスプラッターな描写がありますが、ホラー擦れした身としては、ああ、ファンサービスなんだね、って感じで微笑ましく思ったりもしましたし(真に受けないように)。
多分、これはこれでいいんでしょうし、あえてどうこういうものでもない、ってのはわかってるんです、わかってるんですけどね、ただやっぱりねえ、余計な一言を付け加えるなら「全部が予想通り」ってのは少なからずあったような気もするんです。
多分こんな感じで笑わせたり、怖がらせたりしてくれるんだろうな、というのを一切裏切らなかった、というか。
そこに物足りなさを感じる私のようなファンも少しはいるんじゃないか?と思うんですよね。
謎の力を秘めた短剣を事件の鍵とする手垢感や、最後にもうひと盛り上がりありますよ、と匂わせる構成とか、あまりにも予定調和でね、B級の枠組みを逸脱しかねないランドンの才気はどこへいったんだ?と思わなくもなくて。
見たまんま、なんですよね。
正直、もっと怖くておぞましくてもいいし、もっと笑いに貪欲に破調でもいい、と思った。
これを「口当たりが良すぎる」というのは酷なんでしょうけど。
ま、 ハッピー・デス・デイ も2で化けたんで。
ブラムハウス・プロダクションズは続編に意欲的らしいんで、次回作を待つことにしようか、と。
間口の広い作品だとは思いますね。
ホラーが苦手な人でも楽しめるんじゃないでしょうか。