カナダ 2016
監督、脚本 ナチョ・ビガロンド

アイディアそのものは面白かった、と思います。
ある特定のエリアに主人公グロリアが侵入すると、なぜかソウルに巨大怪獣が出現し、しかもその動きがグロリアとシンクロする、という発想は、いい意味でばかばかしくてオチの読めない独特さがありました。
なぜそんなことになるの?ってな部分はあんまり突き詰めちゃあいけません。
それなりの理由付けはされてますが、そこは三文SF並にチープですんで「想像力豊かなコメディ」程度で納得しておくのが得策。
まあ、そりゃいいんです。
こういうバカ映画は私、無条件で好きですし。
むしろ問題は「設定ありき」で物語が進行しちゃってることでしょうね。
設定を踏み台として、ストーリーが飛躍していかないんですよね。
簡単に言っちゃうなら、もっと悪ふざけ満開でデタラメにできたでしょう?と。
せっかくの怪獣が、惚れた腫れたの痴情沙汰でこじんまりと料理されちゃってるのがどうにもテンションあがらない、というか。
いや、アル中気味の元同級生のストーカー気質を巨大怪獣に投影したかったのならそれでもいいとは思うんですけどね、それならそれでドラマ作りが甘いと私は思うんですよね。
だいたい劇中で火種となったイケメンがなんの役割も果たしてませんし。
イケメンとヒロインと元同級生の三角関係に元カレ登場、ぐらいのドタバタをやってこそ盛り上がろうというものなのに、放置しちゃうって、なにそれ?って話で。
元同級生のキャラ作りも甘い。
こいつはマジでやばい、と観客に思わせてこそ、それがソウルの街の危機を煽るスリルにも直結しようものなのに、単に酒乱気味の男ではね、別に放おっておいてもいいんじゃない?とか思っちゃいますよね。
ヒロインが体張らなくても他に解決策はいくらでもあるでしょ、みたいな。
早い話がゆるいんです、全体的に。
アン・ハサウェイがダメ女を演じてる割には常に小奇麗な感じなのも気になりましたし。
とりあえず男と迎えた朝に自分だけ服着てベッドの中、ってのはありえない、と思った。
なんか遠慮しちゃってるんですよね、監督がハサウェイに。
こういうコメディって、ヒロインをこれでもかとズタボロにしてこそ笑えるってのを両者ともにわかってらっしゃらない。
オチも法則性が不明でいまいちスッキリせず。
途中で集中力が失せ気味だったんで、何か見落としてるのかもしれませんが、なぜそうなるのかが私にはよくわからなかった。
短編のネタを長編に膨らましきれぬまま低空飛行、が私の総評ですかね。
あーもったいねえなあ。