殺意の誓約

アイスランド 2016
監督 バルタザール・コルマウクル
脚本 バルタザール・コルマウクル、オーラフル・エギル・エーギルソン

殺意の誓約

娘の連れてきた彼氏が定職にもつかぬドラッグの売人だと知った父親の、アウトサイドな実力行使を描いたサスペンス。

ちょっとホラー寄りな内容なのかな?と先入観をいだきそうではありますが、決して父親はぶっこわれたサイコパスというわけではなく、真っ当な外科医で普通に良きパパである、というのがこの作品のミソ。

父親、やや娘に甘い印象もうけますが、まあ、こんな家庭はどこにでもあるだろう、と思える範囲。

いうなれば、降って湧いたような災難なわけです。

娘自身は彼氏にメロメロで親の言うことなんて聞きやしない。

けれど、父親は彼氏がろくでもない男だと知ってる。

別れるように強要すると、逆に父親を脅してくるような人物。

最終的に、常識的で地位もある父親が追い詰められた挙句、ついには非合法手段に打って出るストーリー展開はなかなかよくできてた、と思います。

人体を知り尽くした医者を本気にさせちゃあやばい、と私なんかは怖くなりましたし。

おそらくそこがこの作品の最大の見せ場でしょうね。

父親が娘への盲愛のために狂気にかられる演出は巧みだった、と言っていいでしょう。

いささか残念だったのはエンディング。

父と娘では見えているものが違うという事実、良識的であることが絶対的に正しいとも言い切れない、と示唆したかったのかもしれませんが、ちょっとね、すっきりしないんですよね。

えっ、ここで終わってしまうの?みたいな。

その後結局、どうなったのか教えてくれよ!みたいな。

ボヤに油を注いで大火事にしてしまったのは、実は父親自身だったのではないか?と問いかける顛末に興味深いものはあったのですが、なにをもってこの物語を締めくくるのか、「いや、とりあえずこのシーンじゃないだろう?」って拍子抜けな感触のほうが私は強かった。

面白かったんですけどね、肝心要なところでインパクトを残せなかったような気がします。

あと一歩、でしょうか。

言葉足らず、と言っては酷すぎるかもしれませんが、ラストにガツンとくる何かがあれば名作と呼べたかもしれないだけに惜しいの一言ですね。

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