イギリス 2016
監督 ベン・ウィートリー
原作 J・G・バラード
上層階と下層階で身分格差らしきものが存在する40階建ての高層マンションで暮らす住人たちが、日々の生活を営むうちにだんだんおかしくなっていく様子を描いた不条理ドラマ。
原作はSF小説だといわれているようですが、映画を見た限りではどこがSF?って感じですね。
活字だとまた質感が違うのかもしれませんが。
というか、この作品、私はなんかよくわからなかった、ってのが正直なところ。
そもそもですね、住人たちがおかしくなっていくその動機らしきもの、要因らしきものがひどく薄弱なんです。
目立って蔑視、差別が横行してるわけでもない。
なにかに大きく不自由しているわけでもない。
なのに気がつきゃ飛び降り自殺する人間はでてくるわ、共用スペースは荒れ放題で無法地帯みたいになるわで、見てて最後まで何故?何故?の疑問符がずっと頭の中で飛び交い続けてる状態でしたね。
推察するに、プールもあればエステもある、中層階にはスーパーまであるいたれりつくせりの環境に依存する状況が、無自覚の閉鎖性を招き、挙句には退行を促すこともあるのだ、と語りたかったのかもしれませんが、だったとしてもそれをここから汲み取るのはやっぱりかなりの難事業です。
どうにも観念的というかシュールというか。
途中で何度も寝オチしかけました。
まあ中盤ぐらいまではね、思わせぶりに断片的なシーンを幾重にも塗り重ねる監督の手腕に、なかなかテクニックがある、と思ったりもしたんですが、いかんせん交わらない糸が野放図に広がっていくだけのストーリーテリングに集中力はどうにも持続せず。
つかみどころがない、ってのが本音。
どこか寓話っぽい、ってのはありますね。
その場合、なにをその裏側に秘めた寓話なのかを読み解かなきゃならんわけですが、読み解いてみたいとも別に思えない、ってのがやっぱり致命的でしょうか。
ちなみに本作、一応舞台は40年前のイギリスらしいです。
多分、当時のイギリスの時代性なんかも反映されてるんでしょうけど、すいません、なんか変に疲れてしまったんで、再検証するなら私は原作本の方を手にとりたいかな、と。
主演のトム・ヒドルストンはいい演技してましたけど、もうほんとそれだけですね、楽しめたのは。
私には色々無理、ってのが結論。