フランス 1955
監督 アンリ=ジョルジュ・クルーゾー
原作 ピエール・ポワロー、トーマス・ナルスジャック
サスペンス映画の古典中の古典、ヒッチコックも嫉妬したと噂される名作中の名作ですね。
すでに制作されて60年が経過しているわけですが、断言します。
今見ても充分おもしろいです。
さすがに風雪にさらされた分ですね、古臭い、と感じられる部分はあります。
しかしそれもこの作品の後半の怖さの前では瑣末な事であるといえます。
中盤以降、いったい何が起きているんだ、と前のめりになること、間違いありません。
とにかくですね、消えた死体を巡る謎にまつわるエピソードのひとつひとつがですね、恐ろしくよくできているんですよね。
なんだこれ、いったいなんのホラーなんだ、と私は産毛が逆立ちました。
舞台が寄宿学校である、という点もその薄気味悪さに拍車をかけているかもしれません。
圧巻なのはラストシーン。
決して口外しないでください、と喧伝されたどんでん返しはクソな邦題のせいで幾分台無しですが、私は軽く腰を浮かせてのけぞってしまいました。
いや、怖すぎるだろうと。
シーンそのものが怖いのではなくてね、こういうシーンを持ってくる、というのが予想外すぎて声が漏れた、というのが正直なところでしょうか。
欲を言うなら嫁と愛人はいかにして共闘するに至ったか、をもう少しじっくり描いて欲しかった、と言うのはありましたが、それが満足感を損なうほどではありません。
名画の看板に偽りなし。
徐々に現実が変容しスリラーに転じていくテイストがお見事。
余談ですが本作、96年にシャロンストーンとイザベルアジャーニのダブルキャストでリメイクされてますがそちらはラストが異なるようです。
私は未見。