1985年初出 吉田秋生
小学館フラワーコミックス 全19巻

アニメにもなったヒット作ですが、私が吉田秋生を読まなくなるきっかけとなったのが実はこの作品でして。
出来が悪いとか、面白くないというわけじゃないんですけどね、あ、作風を変えてきた、と思ったんです、当時。
少女漫画の流儀でリアルな男性像を描くことを得意とするのが作者だと私は考えていたんですが、そこから「少女漫画の作法そのもの」を削ぎ落としてしまったのが本作ではなかったか?と。
つまり、男性読者が読んでも違和感のない普遍化、一般化への歩み寄りですね、いうなれば。
それが何を招いたかというと、没個性化だったような気がするんです。
もちろん、吉田秋生ならではの美点はたくさん詰まってると思うし、これまで培ってきたものすべてをないがしろにしてるわけじゃない。
でもね、この手のクライム・アクション、犯罪もの、って、それこそ紙面から血と硝煙の匂いが立ち上ってくるような凄まじい作品が、これまで劇画の世界を中心として大量に発表されているわけですよ。
それらと同じ土俵に立った場合、どうしたって見劣りする部分は避けられない。
ありていに言うなら、この手のジャンルにしては絵に凄みや迫力がないし、アクションから痛みが伝わってこないんです。
なんだか昨日まで文芸作品にでていた俳優が、なんの準備もなしにハリウッドアクション大作に出演して全然動けてないばかりか、ひとり浮いてるような印象を抱かせるんですよね。
丸腰で来たのか、お前は、みたいな。
これがもし、主人公のアッシュをカリフォルニア物語のヒースのように演出していたなら、私はきっと大絶賛していたと思うんです。
それはきっと作者にしか描けない裏切りと暴力の物語になっていたはずだから。
古い読者の見当違いな思い入れなのかもしれませんが、私は作者に犯罪映画みたいなふてぶてしさ、悪徳のロマンを一ミリも求めてないわけですよ。
ま、これだけ長期の連載でよくぞ破綻なくまとめあげた、と思うし、エンディングも感動的だ、と素直に思いますが、これは吉田秋生じゃなくてもよかった、というのが正直なところ。
以降、熱心に追わなくなってしまいましたね。
コメント
[…] BANANA FISHで作者とはお別れをして、幾星霜。 […]