デンマーク 2014
監督 スサンネ・ビア
脚本 アナス・トマス・イェンセン
北欧の映画文化なんてまるで知らない半端者な私だったりするんですが、この作品にはちょっと驚かされましたね。
なんだこれ、すっごいレベル高いじゃないか、と。
ここまでやるのか北欧、と。
いや、スサンネ・ビア1人がただ凄いのかもしれませんけど、えーすいません、知らないんです。
とりあえず私が後にも先にも感心したのは主人公アンドレアスの妻、アナの描き方。
これ、本当に微妙でわかる人にしかわからない程度の話なのかもしれませんが、一見普通に見えて、どこかエキセントリックに感じられるんですね、彼女の立ち居振る舞いそのものが。
育児に疲れていて神経質になってるのかな、ともとれるし、そういう性質の人なのかな、ともとれる。
要はそこはかとなく不安定なんです。
だから見過ごしてしまいがちなんですが、どこか指先のささくれのように心の片隅にひっかかる。
もちろんなにもひっかからなかった、という人も居るでしょう。
恐るべきは、そんな見過ごしてしまいそうな程度のつまずきを、監督は物語の導火線として序盤に用意したこと。
中盤。
ああ、アナはやっぱりどこか心を病んでいるのかな、と自分の見立てが間違っていなかったことを半ば確信。
それにしてもアンドレアスしっかりしろ、と。
お前はもう本当にもうちょっと考えて行動しろ、と。
実はこう思うことすら監督の掌の上。
そして終盤。
あーなんか人間ドラマみたいな感じで重々しいテーマを抱えたまま終わっちゃうのかなあ、なんて思っていたら衝撃のどんでん返しが最後に待ち受けていて腰が抜けます。
すべては最初からつながっていたのだ、とその見事な伏線の張り方に仰天。
フラッシュバックするあまたのシーン。
あとからもう一度見直せば、なにもかもがあるひとつの事実を示唆していたのだ、と知って震撼すること間違いなし。
多くを語らずに、ここまであざやかに揺れる女性の心の機微を描き、それをストーリーの核とすることが出来たのは女流監督ならではの手腕なのでしょうか。
まさかあのささやかな不穏さが、とその巧さに舌を巻く。
またこの作品は多くの既婚男性に、いかにお前達の目が節穴であるか、と思い知らせてくれます。
もう謝るしかありません。
絶対心当たりがあるはずだ、あなたにも。
ま、そりゃ映画とは関係ないんだけれども。
時折挿入される寒々しい北欧の景色、海の表情も作品を彩る上でその独自色を加速。
優れたサスペンスだと思います。
驚かされて、なおかつ色んなことを考えさせられる。
いやこれはちょっと凄いと思いますね。