パッション

フランス/ドイツ 2015
監督、脚本 ブライアン・デ・パルマ

パッション

広告会社で働く二人の女性の権謀術策を描いた愛憎渦巻くサスペンス。

フランス映画「ラブ・クライム/偽りの愛に溺れて」のリメイクです。

元々の脚本はオリジナルの監督でもあるアラン・コルノーが書いているらしいんですが、デパルマはそれを改変したようです。

まあ、あらすじを読む限りでは大筋では変わっていないみたいですけどね。

リメイクとはいえ、往年のデパルマらしい題材だな、とは思いました。

適度に猥雑でインモラル、殺人事件にまで発展するシナリオはまさにあの頃のよう。

ああ、デパルマが帰ってきた!と喜ぶファンの自分も居るんですけどね、なんといいますか、ちょっと心中複雑だったりもする。

お得意の分割画面や、レイジングケイン(1992)のようなフラッシュバックの多用等、手の内をひけらかすのに惜しみはありませんし、女同士の社内における権力闘争を描いたドラマを今時大真面目にやる、というどこか時代とずれた感覚もらしい、といえばらしいのかもしれない。

でもやっぱりこれ、辛辣に書くなら粗悪な自己模倣なんですよね。

愛のメモリー(1976)やボディダブル(1984)のようだ、とは言えても、決してミッドナイトクロス(1981)ではないわけです。

原点回帰といえば聞こえはいいですが、逆に言うなら、じゃあこれまでのキャリアはなんだったの、とも問えるわけで。

デパルマファンのための作品、としては申し分ないのかもしれませんが、広く映画ファンにアピールするにはやっぱり弱い、と言わざるを得ない。

特にイザベル、そこまで追い詰められてたか?と疑問を抱かざるを得ないシナリオはとても目の肥えた映画ファンに希求するものとは思えない。

ここでキャリアを終えてほしくない、というのが観終わった後の一番の感想でしたね。

次があるのかどうかわかりませんが、私が熱狂したデパルマはこんなのじゃない、と言うのだけは本音です。

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