アメリカ 2015
監督、脚本 レベッカ・ミラー

人の旦那と恋仲になり、強引に略奪婚してみたものの、数ヶ月でうまくやっていけないことを悟り、なんとか元嫁と復縁させようとする主人公マギーの企みを描いたコメディ。
あらすじを読む限りでは、あ、なんか面白そう、と思いません?
いったいどんな計画を立てたら、元ザヤに戻ったりするんだろうと。
まあ、普通に考えて無理ですよね。
男の側が心変わりする、というならまだわかる。
そんな話は世間のあちこちに転がってる。
けれど、奪った側の女から元嫁に返す、って、どう考えても待ち受けてるのは修羅場でしかないように思えて仕方ない。
きっとそのあたりを映画ならではのトリッキーさ、都合の良さでもって、面白おかしく見せてくれるんだろうな、と。
なるほど、こんな手もあったか、みたいな感じで。
また逆に言うなら、そこがこの映画における最大のセールスポイント、核となる部分にならなきゃいけないはずだったんです。
ところがだ。
マギー、ほとんど無計画だった、というかなんとなく成り行きで物語は収まった。
いやもうね、あらすじ読むだけで全部説明できてしまう映画なんて、ほんと久々に遭遇しました。
どこにも向かってないんですよ、この物語。
派手に笑わせるわけでもなければ、胸を打つ場面があるわけでもない、しんみりと泣かせるわけでもなければ、考えさせられるわけでもない。
現実のほうがよっぽど生々しくて、手痛くて、驚きと不可解さに満ちてるわ!とつっこみたくなるって、創作としてどうなんだと。
つまらない現実の上手を行くクリエイティビティがあるからこそ映画じゃねえのか、と。
ドラマ不在、とはいいません。
それなりに見れるし、細かい演出にも気を配ってる。
でも、肝心のシナリオ展開が「だからどうした」としかいいようがない。
全部登場人物達だけで自己完結しちゃってるんですよ。
なんの共感も啓蒙も驚きもない。
こういう作品を観客不在、と言う。
グレタ・ガーウィグもイーサン・ホークもいい演技してたし、ジュリアン・ムーアも貫禄の名演だったんですけど、彼らをのっける器が話にならないですね。
完成した作品を見て、これ、本当におもしろいのか?と言うところから一度疑ってみたほうがいいと思う次第。
何を撮りたかったのか、何を伝えたかったのか、なにひとつ浮かび上がってこない凡作だと思います。
せめてもうちょっと笑わせてくれたら、とも思うんですが、それでも物語性の欠落は補えないか。
うーむ、やんぬるかな。