宇宙長屋

1979年初出 石川賢
双葉社アクションコミックス

週刊漫画ゴラクに連載されていた連作長編を双葉社が00年に再単行本化したもの。

落語でおなじみの熊さん八っつあんがドタバタ劇を繰り広げる艶笑コメディなんですが、そこは石川賢ですんで舞台は宇宙。

なんせなめくじ長屋が単独で地球の軌道上を回る衛星のひとつ、って設定ですんでばかばかしいというか、ふざけてるというか。

けどまあ、古めかしいものを新しい器に盛るのがSFなのだとしたら方法論としては正しい、と思ったりもするわけです。

SFなギミック、ガジェットをあちこちに散りばめながら、ミクロの決死圏をやってみたりスターウォーズをやってみたり民話っぽいことをやってみたりと、デタラメきわまりないんですが、こういうアプローチは割と好きですね、私は。

真面目に読んじゃあいけませんけどね、悪ふざけの背後に「SFファンをくすぐってやろう」とする作者の遊び心が透けて見えるのがなんだかいい。

日本でSFがまだ元気だった頃を偲んでしまいそうになる1冊ですね。

突出した出来、ってわけでもないんですが石川ギャグの秀作を選ぶとするなら候補にあがる一作と言えるんじゃないでしょうか。

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