2015年初出 高浜寛
リイド社 1~2巻(全6巻)

明治11年の長崎を舞台に、物に触れるだけで持ち主の過去と未来が見える少女の、骨董店で働く日々を描いた歴史ロマン。
触れるだけで見える、ってことはサイコメトリーなのかな?と最初は思ったんですが、未来までわかっちゃうとなると厳密には違うような気もしますね。
というか、未来予知にまで神通力が及ぶとなると、これもう新興宗教の教祖クラスなとんでもない能力なのでは?と私は思うんですが、作中ではそのあたり、あまり掘り下げて言及されてません。
むしろ余技的な芸、みたいな扱い。
主筋として語られるのは、針仕事も給仕もできない無愛想な女の子が、なんとか骨董店に居場所を見つけていく手探りな毎日の様子。
少女の不思議な力が物語を進めていく上でなにか大きな意味を持つわけでもない、ってのが私はちょっと解せなかったりはします。
両親が他界して、親族に引き取られているがゆえ、まともな教育をうけられなかったことが少女を「使えないやつ」にした、みたいな描き方なんですね。
これなら別に神通力設定とか必要ないじゃん、って。
実は聡明な女の子だった、というのを落とし所にしたいのなら。
全巻読んでないので断言はできませんが。
あと気になったのは、激動の明治初期に生きる人々を丁寧に描写しつつも、誰もがいい人ばかりなことですかね。
性善説に寄り添いたい気持ちが根底にはあるのかもしれませんが、私はもう少し姑息で陰惨でもよかったんじゃないかと思います。
どことなく「あったかもしれないもうひとつの明治時代」みたいな感触をうけるんですよね。
リアルなようでファンタジーっぽいんです。
私はこれを少女漫画の文脈、と捉える。
それは2巻終盤においてさらに顕著で。
正直、少女の恋心の行方とか、私はもう本当にどうでもよくて。
入念なキャラクター設定や舞台背景の作り込みも結局はラブロマンスに集約されちゃうわけ?といささか落胆。
出来がよくない、とは言いません。
けれどこれはやっぱり女性向きの漫画だなあ、と思います。
昔の花とゆめとか、プチコミックに連載されてそうな感じ。
3巻以降の展開で化けるのかもしれませんが、現状テリトリー外というのが正直なところでしょうか。