2011 カナダ/フランス
監督 ヴィニ・ヴィルヌーヴ
原作戯曲 ワジディ・ムアワッド
プリズナーズがあまりにおもしろかったので、遡って見た同監督の作品ですが、これがまたとんでもない作品で、再び仰天。
母の死後、遺言に従い、所在不明の父親と兄を探すために、過去をさぐる旅に出た双子の姉弟を描いた作品なわけですが、 まー、なんと言えばいいんですかね、とりあえずかなり重いです。
少しづつ過去が明らかになっていくにつれ、物語はどんどん母の壮絶な人生を、その深い哀しみを明らかにしていくんですが、なんだかもう画面の前に座っていて私は息苦しささえ感じました。
作品は過去と現在が交互に描写される作りなんですが、内戦真っ只中だった中東を舞台に、運命を翻弄され続ける母の姿は、安直に戦争批判という言葉を持ち出すのすらためらわれるほど数奇で奇矯です。
なんて世界は、愚昧なんだろう、その一言しかでてきません。
衝撃的だったのはすべての真相が明らかになるラスト。
心臓がもたない、と思いました。
全く予測がつかなかった、というのもありますし、前半のあのシーンやこのシーンはすべてここにつながっていたのか!と見事な伏線に戦慄した、と言うのもあります。
とにかく徹底的に救いがない、のは間違いなし。
知らない方がいいことがある、とはまさにこのことではないか、とつくづく思いました。
はたしてこの結末で、幸せになった人間は誰か1人でも居たのか。
なぜ母はこの事実を双子に探らせようとしたのか。
見る側を凍りつかせる内容の作品です。
双子のその後の人生を思うと、もう・・・。
はたしてこれ、文芸作品なのか、エンターティメントなのか、それともサスペンスなのか、私にはどうにも判別がつきませんでしたが、強烈に印象に残る一本であることは確かです。
そうそう出会えるレベルにはない凄まじい映画ですが、さて、これをおもしろかった、と人に勧めてもいいものなのか、ちょっと悩んでしまいますね。
隙のない完成度と言う意味ではプリズナーズの方が上か、と思いますが、ぶちのめされるのはこっちですかね。
何度も見たい、と思えるタイプの映画ではない、ということだけ、最後に記しておこうと思います。
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